5月17日
80年に出た「天才と肉欲」(ノーマン・メイラーが編んで、いくらかの評論を加えた、一冊本ヘンリー・ミラー選集)をひさしぶりに購入。これまで、出てすぐ(大学二年目)と、30歳すぎに購入し、二度ともそれぞれ引っ越しのとき古本屋に売ったので、三度目の購入ということになります。なぜまた買ったのか。 2024年の秋、昔から手放さずに持っていた河野一郎訳「ネクサス」を再読してからにわかにまたミラーを読み始め、大久保訳「北回帰線」、河野訳「南回帰線」、吉行訳「愛と笑いの夜」と再読、再々読して、いま大久保訳「セクサス」の前半を読み終わったところなのですが、なんとなく、ほかの小品も読みたくなって、でも何冊にもなるのはいやだな、と思ったとき、この本があるのを思い出しました。「マルーシの巨像」は電子書籍も出ていて買ったのでいいとして、「冷房装置の悪夢」「性の世界」「ビッグ・サー」などは、2010年ごろ出た水声社のコレクションか、旧ヘンリー・ミラー全集でないと読むことができません。北・南と、セクサス、プレクサス、ネクサスを主食として、ただミラーの風変わりな自伝として味読している私にとっては、おかずにそれほど費用も時間もかけたくはない、という感じで、それには、これら小品の一部が採録してあるこの本がとても便利なのです。適当に拾い読みしていますが、これまでほとんど読まなかったメイラーの地の文も、読んでみるとなかなかおもしろいし、アナイス・ニンの日記の抜粋も興味深い。とてもいい本だな、と思います。
「セクサス」を読み終わったら、また「プレクサス」を読むと思うのですが、16年前に水声社版で再読したので、今度はまた新潮社版で読んでみようか、などと考えています。主食の5冊を読めば、ミラーの子供のころから、青年時代、二度目の奥さんとの出会いと別れ、パリでの放浪と、その半生を克明にたどることができます。「ネクサス」の最後で希望に満ちていた主人公が、パリでホームレスのような暮らしをしながら、「北回帰線」という異物を生み出す。そうして生み出した主人公が生み出すまでを回想する……。これは完全に循環になっていて、その循環をたどりなおすのが、何度やってもおもしろい。こういう感じは、プルースト、ジョイス、また、「豊饒の海」と庄司薫の四部作などに共通する楽しさです。
とりあえずいまは、ミラーを読むことと、中公文庫「ドストエフスキー全短編」を手にすることを目標に生きています。
約ひと月風邪をひいていて、友だち は一行も書けませんでした。