発達障害では薬を服用する前に、いろいろな療法を試す必要はあると思います。このあたりのことは当事者のテンプル・グランディンさんの「自閉症感覚」を読まれるとよいと思います。

 

発達障害では神経伝達物質(ドーパミン、セロトニン、GABAなど100種類ほどある)のバランスが興奮性に偏っている人が結構いてアンバランスです。そのために衝動性(自傷行為、暴力、パニック)が起こりやすいです。特に思春期以降は前頭葉の働きはまだ未熟で、性ホルモンの関係で辺緑系が興奮しやすくなります。前頭葉が発達していればこの興奮も抑制できるようになると思うのですが20代前半までは未熟で精神病も発病しやすいのです。この興奮は抑制しないといけません。認知が著しく低下することもあります。

 

ADHDの薬が覚せい剤と作用が似ていることを書いているブログがありますが、ドーパミンが少ないと言われているADHDとそうでない人と作用の仕方も異なります。

 

シナプスとシナプスの間にはわずかな隙間があり、神経伝達物質は前からと受け取る側、受容体、あるいはレセプターがあってメチルフェデート塩酸塩などはシナプスの前から放出されるドーパミンを回収するドーパミントランスポーター(ドーパミン再取り込み口)による再吸収を妨げるものです。

 

ADHDではドーパミンが少なくて注意欠陥、多動などの症状があると言われています。

 

メチルフェデート塩酸塩などを服用するとADHDでドーパミンが少なければ、前から送られるドーパミンの量が増えるわけですから受容体がキャッチできるので情報が繋がるというわけです。

 

しかし、ドーパミンが正常な人はドーパミンが増えすぎるので問題があります。そこで慎重に薬物療法が必要か診断します。

 

「発達障害は治りますか?」からの引用です。

今コンサータを使うと文字がきれいになる子が多いんです。これまで検証されているのは、多動衝動が治まるかどうか注意が改善するとかです。メチルフェディネート(コンサータやリタリン)の研究では実行機能の改善等も検証されていると思うんですが、感覚運動面がどうかわるかはまだ検証されていません。そこで、今うちの院生に、コンサーターを処方される前とあととどういう風に感覚運動面が変化するか研究してほしいと言ってあります。だから先ほど見せたような検査を使って、コンサータの処方前とあとで変化を見ようとしています。

 

ストテラとコンサータの違いについては

 

ストテラは基底核にあまり作用しないので、ストテラとコンサータは感覚運動面に対する効果が違うんじゃないかと思うんです。だから僕の今の仮説では、不器用を伴うADHDの子にはコンサータが必要だと思うんです。基底核を働かせなくちゃいけないから。でもあまり不器用を伴わなくて実行機能や衝動性の問題がメインのケースにはストテラなんじゃないかなと思っています。

 

薬が必要かどうかについては次のような検査をして確認します。

 

ゆっくりとした動きの模倣の検査や手を裏返しに素早く動かす検査などでぎこちなさ、目をつぶって両手を前に伸ばす検査での手の不随意運動、両手を連続的に動かした際の模倣の苦手さなど、が同時に見られた場合に、基底核が関与する神経活動の問題を推定することがあります

 

また、P252には

検査から見る脳機能・伝達物質についてのまとめby岩永先生

 

①左右差からの推定

②運動系の問題の組み合わせ

③神経伝達物質の問題の推定

で詳しく書かれています。

 

検査で神経伝達物質のバランスとかある程度推定できるんです。

 

統合失調症の診断で、ジプレキサ、リスパダール、ロナセンとか処方されますが、これらの薬の作用もドーパミンレセプターを強くブロックするものもあれば、レセプターにくっついてすぐに離れるもの、いろいろなレセプターに作用するもの、とても複雑なんです。

 

ですから神経伝達物質(モノアミン)のバランスや問題を推測することは大切です。

単純に診断名で適当に薬を処方しているわけではありません。

 

発達障害では折り紙が折れない、ネクタイが結べないとか、動きがぎこちないとか身体性の問題もあります。

 

他にも視界に遠近感がない。ノイズがあってクリアでない。聴覚過敏などの過敏性。髪型が変わると誰かわからないなど相貌失認。方向音痴。右左がわからない。

 

これらは小脳、基底核、頭頂葉、紡錘状回の機能障害があります。

 

支援する側が発達障害について理解していないと不適切な支援で悪化して二次障害が起こる場合もあります。

情報にも間違いが多いです。

 

当事者のテンプル・グランディンさんの本がとても参考になると思います。