「……お腹、空いたな」

16cm上から降ってきた彼の飾らない呟きに、私は「私も」と小さく笑って頷く。

濃密な静寂が破れ、私たちは二人で並んでキッチンに立った。

トントンと包丁を叩く私の隣で、彼が大きな手で鍋のスープをそっとかき混ぜる。

「ちょっと味見してみろ」

差し出されたスプーンに私が身を乗り出すと、彼はこぼさないように優しく手元を支えてくれた。

湯気の向こうで微笑む彼の横顔を見つめながら、私は温かいスープを味わう。

特別じゃないこの毎日こそが、私たちが命がけで守り抜いた宝物だった。