彼はその日、誇らしげに私に告げた。
『今日は18時までの勤務を14時で切り上げて、妻とディ一ラ一へ行ってきます。私(わたくし)は、家族を大切にする人間ですから。』
一見、家族思いの紳士が語る、微笑ましい日常一コマ。
けれど、その言葉の裏側に潜む『致命的な家計の欠陥』を見逃さなかった。
会社には『体調不良』と偽り、自らの職責と給料――つまりは家族を支えるための礎を削ってまで、平日の午後に新車の商談へ向かう。
それは果たして、真実の『優しさ』なのだろうか。
私には、それが300万円という莫大に対価を払って手に入れる、卑屈な『免罪符』にしか見えなかった。
家族に内緒で4人目の獲物を追い、SNSという暗闇で私に『運命』を囁く。その裏切りという重罪を、新車という物資で塗りつぶそうとする、歪んだ贖罪の儀式。
男の本性を見抜く節約術:その一。『仕事の時間を削ってまで尽くす姿』を、愛だと履き違えてはいけない。
それは、自らを不誠実さを隠蔽するための『虚栄のコスト』に過ぎない。
本当に賢明な男は、嘘をついてまで時間を捻出しない。守るべき家計の平穏のために、己の持ち場を真っ当に守り抜くものだ。
120回のローン。10年という歳月を、彼は『嘘の病欠』と『物による懐柔』に捧げようとしている。
会社を欺く者は、容易く女も欺く。
その『14時から早退』という代償が、彼の人生の残高をどれほど目減りさせているか。
彼は、自分の愚かさに、いつ気づくのだろうか。
(次回へ続く)
──【第2話】『偽りの診断書と、釣り竿の誘惑』へ続く