「marichatoの子どもの日本名は何?」とよく聞かれます。聞かれるたびに、答えに窮する私。なぜなら、日本の名前としてつけたつもりだったから。ハーフの子どもを持つ親にとって、いえ、日本人同士であっても、子どもの名付けってむずかしいものではないかと思います。今回は迷いに迷ってつけた、息子の名前の話です。

{729B4EAF-497C-41A4-9D6C-791A5FEE998F}

私はもし子どもに恵まれたら漢字で書ける名前にしたいと常々思っていました。日本にいたらどうだったかわからないけれど、海外で暮らす中で子どもに自分のルーツを自覚してもらうために漢字にこだわっていました。そして読みやすく発音しやすい名前がいいなぁと。日本には名付けの本もあったり、名前にはバリエーションがたくさんあり、さらに漢字でバリエーションを増やすことができる。例えば、「じゅん」という名前でもどれだけの漢字があることでしょう。

そうしたバリエーションの中で夫の母国、ギリシャでも通用しそうな名前がいいなぁと思っていたのです。いかに無知だったか!!

ギリシャでは一般的に男の子なら父方のおじいちゃん、女の子なら母方のおばあちゃんの名前をつけます。つまり名前が二世代でリサイクルされていく…。でも私はギリシャ人ではないし、夫も私も海外で暮らしているわけだから、その習慣にとらわれずお互いの国のルーツをもった名前にしたいね、というところで意見が一致しました。と言いながら、ギリシャの名前はかなりバリエーションが少ないのです。

{B0C4E648-4172-4BFB-8BA3-389740C26F21}

名前をリサイクルしていることも理由ですが、ギリシャの名前は通常、ギリシャ正教の聖人の名前をつけるからです。聖人とは、生前いいことをした人を死後神と同等に崇めたもので、ギリシャ正教にはたくさんの聖人がいます。宗教は自分で決めさせたいと言いながら、ギリシャ聖人の名前でないと洗礼を受けさせてくれない場合が多く、念のためにギリシャ聖人の名前にしておきたいという夫。

また、ギリシャでは基本的にミドルネームはなく、ファーストネームがクリスチャンネームになっています。名前にはそれぞれ「名前の日」があり、お誕生日よりも名前の日の方が大切にされているほど。例えばうちの夫の誕生日は5月ですが名前の日は11月で、11月のその日はたくさんの友だちからお祝いの電話がかかってきます。確かにギリシャ人のルーツを持ちながら「名前の日」がない名前はかわいそうかな。ちなみに「名前の日」がない人のために「その他諸々の名前の日」という日がありますが、それもなんだか…。

と、かなり縛りがあるギリシャ名。ギリシャの男性名一覧表を見てみましたが(そう、一覧できてしまうほど名前が少ないのです。日本では本になってしまうくらい多いのに!)、漢字で書けないものが多くて。夫の友だちの名前を見ても、

パナヨティス→巴奈世手巣??
アンドレアス→安土令亜須??
ヨルゴス→夜吾須???
いやだ〜〜〜、ギリシャ名一覧の名前はどれもイヤ!!勝手に日本名付ける!と大騒ぎしていたのです。

常に冷静な夫の「じゃ、日本名なら何がいい?」との問いに、「直人!素直な人!いい名前でしょ?」と鼻の穴を膨らませながら言うと、「でも男の子だよ。」と。…そうでした、ギリシャでは男性名はSで終わらないといけないという決まりがあるのです。NaotoのようにOで終わるのは中性名詞になってしまう。だけどSで終わらないといけないとなると漢字では「須」「巣」が避けられないというわけ??それでも漢字で書けるという条件は譲れない私。

試行錯誤しながらも、日本名、ギリシャ名と別々につけるのではなく、1つの名前にしたいというところでは意見が一致していた私たち。そのために名付けは1番楽しい過程でありそうなのに、あまり楽しくないギリシャの男性名一覧表(ごめんなさい)をにらめっこしながら、名前の決定まで何ヶ月もかかりました。

結局、ギリシャ聖人の名前でなくても洗礼を受けさせてくれる神父さんがいることがわかり、夫の祖父がイタリア人であることからその名前をギリシャ風にしてみることを考えつき(一覧表から脱却!!)、漢字もなんとか当てはめることができました。

つけた漢字の1文字が、中国語で「熊」と同じ発音であることから、中国人の友だちには「小熊」と呼んでもらい、かわいいあだ名が嬉しい私。時間をかけてつけた分、そんなかわいいオマケがついてきたのかな。

と、ようやく納得できる名前をつけられたつもりだった私に「日本名は?」と聞いてくれる友だち。う〜ん、日本らしい名前かと思っているのになぁ。。