夢中で過ごした三年目



ある日一通の手紙が



赤木春恵先生の記念のパーティーがあると



しかも会社からそんなに離れていない場所



悩んでいたら



よかったら顔を見せてちょうだい



とのご連絡をいただき





三年ぶりに



赤木先生はじめ皆様にお会いして



そこで






あなた 探してたのよ



どこにいたの






とおっしゃる声が。。



石井ふく子先生でした






また 女たちの忠臣蔵をやることになって



あの役は あなたしかいないから



どうしたらいいかと思ってたのよ








あの役 というのは



お琴を習っている娘役で



あまり広くない部屋の中で



目の見えない先生と二人



板付で琴を弾き



弾き終わった琴を二台片付け



素早く去ってくる という



私が二十代からやらせていただいていた役で



今回は特に






お琴を毎日弾くことになったから



大変なのよ






とのこと



大石瀬左衛門の盲目の姉 のお役を



初役で 一路真輝さんがされることになり



弾く気まんまんなの



だそう




あの役は目が見えないので



今までは曲に合わせて



弾く真似をしてたのですが



ほんとに弾くとなると。。


 
これはまた別に話しますね








石井先生に



現在の事情を話し ご相談したところ




ゆっくり考えてちょうだい




とご理解いただき




その日は帰ってきたものの



あの石井先生から



あなたしかいないの



と言われたお声が 響いて



どんなところに身を置いていても



自分じゃなきゃ



なんてことはほんとはない



代わりなんていくらでもいる





翌日 朝一番に




やります お願い致します




とお返事して



なんだかドキドキしていた







自分の帰れる場所がある




絶対戻らない 戻れないと




固く思っていた 心の氷が




さーっと 溶けた






周りからは




なんでこんないい環境を捨てるの とか




ボーナスもなくなっちゃうよ とか




現実的じゃない 目を覚ませ 




とか言われたけど






嬉しさしかなかった