2021年7月24日(土・祝)11時公演、15時半公演

神奈川芸術劇場KAATで星組2番手、愛ちゃんこと愛月ひかる主演ミュージカル・ロマン「マノン」を観てまいりました。

7月1日から12日まで、宝塚バウホールで、そして22日木曜日が初日で、この日は3日目。28日が千秋楽と言う、ほぼ7月1か月をかけての公演です。

 

星組はトップコンビ中心のコンサート「VERDAD」に若手メンバーを、轟さん主演公演「婆沙羅の玄孫」に天華えま、極美慎の若手スターを振り分けており、結果、こちらの公演では、2番手処を綺城ひか理、天飛華音が分け合い、それ以外はめくるめく星組のオジサマ役者が勢ぞろい、という舞台。

 

ネタバレありのあらすじは…


アベ・プレヴォ―の原作ではフランスが舞台。駆け落ち同然の二人はパリに逃げ、囚人として護送される先はアメリカのまだ未開拓のルイジアナ。この作品はオペラの「マノン」のストーリーをスペインを舞台に置き換えてなぞっている感じ。

セビリアの名門貴族の次男ロドリゴ(愛月)は友人ミゲル(綺城)と里帰りの途中。居酒屋でくつろいでいると、修道院に入れられてしまう!という美少女マノン(有沙)に助けを求められ、共にマドリッドに出奔。隣家の資産家フェルナンド(輝咲玲央)に贅沢な暮らしを約束されてその気になってしまうマノン。一方、ロドリゴはセビリアの実家で父オリベイラ伯爵(大輝真琴)に諭されるもマノンへの愛に生きると家を飛び出す。

フェルナンドにもらった指輪を投げ捨て、彼にはない品のあるロドリゴと生きると決意するマノン。ふたりは田舎での暮らしを算段するが、そこにマノンの兄、近衛兵のレスコー(天飛華音)が恋人エレーナ(水乃ゆり)と仲間たちをひきつれて押しかける。彼らをもてなすために貯えを使い切り、使用人の裏切りにもあい、窮したロドリゴにレスコーはある提案をする。マノンの弟、ということになっていて欲しいと。

家に戻ると着飾ったマノンがアルフォンゾ公爵(朝水りょう)と過ごしており、弟として公爵に一度は挨拶したものの、愛するマノンを愛人として差し出すことに我慢ならず、公爵にすべてをぶちまけてしまうロドリゴ。計画を台無しにしたと嘆くレスコー兄妹。

賭場でいかさま賭博を試みるロドリゴだが、警察を配備させて罠に嵌め、ロドリゴとマノンを逮捕させる算段を胸に秘めた公爵がそこにいた。

母(紫月音寧)の奔走で親友ミゲルのいる修道院での軟禁生活に移してもらえたロドリゴだが、マノンがマドリッドの刑務所からモロッコに移送されるとレスコーから聞かされて、拳銃を手配させ、脱出のためにミゲルを脅し、弾みで修道院の使用人ロペス(彩葉玲央)を殺めてしまう。

移送途中の休憩場所は奇しくもマノンとロドリゴの出会いの居酒屋。レスコーは言葉巧みに女囚護送隊のフェンテス隊長(遥斗勇帆)を買収してロドリゴにマノンを救出させ、自分は護送隊との銃撃戦で命を落とす。

逃げるロドリゴとマノン。しかし、マノンは流れ弾に当たって落命。ロドリゴは自暴自棄になって反撃、ハチの巣になり、マノンの傍に頽れる。

幕。

 

個々の感想です。


★愛月ひかる ロドリゴ (93期)

身長173㎝ 広い肩幅、健康的なガタイの良さでどのお衣装も見事に着こなし、名家の御曹司感満載。

とにかく、存在感抜群で、大型スターの輝きに満ちていました。最近には珍しい「男らしさ」全開の男役スターですね。

どこから見ても立派な若者で学生さんというより立派な成人に見えますね。

家族友人ただの知人、会う人皆が真摯に彼を救おうと奮闘するが、マノンへの愛故に盲目になった若者の、若さゆえの過ちと若さゆえの恋の煌めき・・が作品の主題ですが、若さゆえの愚かさというよりは大型犬が彼を良き犬と信じて撫でようとする人々にむやみに噛みついている・・・危険‼という当作品の印象でした💦

例えば、天飛くんとか、極美くんとかの学年でロドリゴならばそんな危うさが出たのかな、と思いましたり。

愛月さんには、もっとしっくり合う作品が他にあったのでは?との思いが何度も去来しました。

あと、兄レスコーにお前、弟と名乗れ、と公爵とのエピソードで言われる時にえ?と抵抗しますが、夫同然の自分がなぜ弟?というより、お前が兄で学年差10年近い自分がなぜ弟?と言っているように思えてなりませんでしたxxx

有沙瞳ちゃんとの相性は本当に抜群ですね。お互いの美点を引き立て合うクラシカルで素敵なカップルです。

 

★有沙瞳 マノン(98期)

ヒロインとして声よし歌よし姿よし。言い寄る男たちのプレゼントに嬌声を上げて喜ぶも、基本は良家のお嬢様。

登場時も修道院入りを拒んで使用人たちの追っ手をかわそうとしますが、その追っ手の人数からも、品のある容姿、立ち居振る舞いからも相当な家の出と思われますが、下々との生活に馴染んでいる様子の兄レスコーがセッティングする援助交際にすんなりと対応できる辺り、謎めいた存在です。華やかなドレスを次々とお召し替えしますが、最後女囚として引かれていくときの簡素な服が、意外にもくらっち(有沙)の美しさを引き立てていたように思いました。

宝塚だから、タイトルロールといえども、男役スターメインの描き方になるためか、マノンの魔性の女っぷり、までが見えてこなかったの残念。これは、有沙さんの演技力云々ではなく、脚本の問題ですね。

ロドリゴの愛ゆえの転落、がテーマになっているように見えました。

バレエ「マノン」での、若く美しい二人の幸せの絶頂である「寝室のパドドゥ」や、死地に赴く、瀕死のマノンとさすらうデグリュ―の「沼地のパドドゥ」のようなドラマチックな歌やダンスで表現される二人の場面がなかったのが物足りない脚本でした。20年再演されなかったのはそのあたりに問題があるのでは。せっかくの再演、少し手を加えても良かったのでは?と個人的には思っています。

 

★綺城ひか理 ミゲル (97期)

身長176㎝のあかさん。ロミジュリでは、ベンヴォ―リオでその美声と高い歌唱力を披露。パリス伯爵も絶妙なさじ加減で、演技巧者でもあるという、結果を残したのにもかかわらずxxx マノン、と言えば、所謂2番手役は出番の多さからして兄のレスコーですよね。

なのに、そこは102期生の天飛華音くんに譲り、あかさんは、愛月さんの親友役に・・・。

得意のお歌を聴かせる場面は1か所だけですし、(しかし渾身のハイレベルであった)2幕に至ってはお衣装も小さなキャップ付きのベージュの僧服って・・・。地味にもほどがありますよね。しかも、親友のために手を尽くし、再起を願っていたのに、あんな、殺人まで犯しての恩をあだで返す仕打ちを受けてxxxx。全国のあかさんファンがのろしを上げて抗議を始めるのでは・・・と不安になったところでのフィナーレナンバー。あのかっこいいシルエットは・・・?愛ちゃん?いや、あかさんだ!キラキラの赤スパンコールお衣装で娘役さん群舞に囲まれたフィナーレの男2番手格、の綺城さん、ために溜めたスターオーラを一気に発散させていらっしゃいました✨

 

★天飛華音 レスコー兄 (102期)

9期上の愛月さんの兄貴分を演じるとは・・・・。

「食聖」の新人公演でヒロイン舞空瞳とともに、同期二人して✨オーラと確かな実力を印象付けたアマトくん。

ロミジュリでは、まさかのAB振り分け要員(その後休演者の代役で結果としては通しで出演できましたが)になるとは・・・。

もったいなかったなぁと。新人公演も見送られた結果、足踏みさせられている感が強かったので、今回のレスコー抜擢はその穴埋めという感もあるのかなと。凛々しい軍服姿で、決して焦らず、余裕感のあるやんちゃな兄を持ちキャラを活かしてそつなく演じていたと思います。

とはいえ、相手は9学年上の愛月さんで、見た目も身長171㎝の童顔で、なかなか厳しい部分も・・・。

賭場のダイスの歌、ちょっと珍しいメロディーラインでしたが、持ち前の綺麗に響かせる声で、素敵な歌唱でしたが、相棒の水乃ゆりちゃんの歌唱力に差がありすぎて、とても気になってしまいましたxxxここは天飛くんのソロで、ゆりちゃんはくるくるダンスする、という演出の方がよかったのではxxx

 

★水乃ゆり エレーナ(レスコー兄の恋人) (102期)

同期で恋人通しだったのですね!

ところで、水乃ゆりちゃん、スペインの踊り子、庶民代表のようなキュートなお役でしたが、セリフ回しや声のトーンに聞き覚えが・・・。

「霧深きエルベ」で、カイちゃんこと七海ひろき氏退団を飾る相手役でしたよね。彼と結婚することになる、主演男役紅ゆずるさんの田舎から出てきた妹役だった、そのままの声、なのですよ・・・。

そして、天飛氏とのデュエット、同じメロディーを水乃さんがソロで歌うパート、ただ音程をなぞっているだけでの地声でxxx。

同じメロディーを今度は天飛氏が歌うと、ただ歌った歌と人に聴かせる歌、というのはこう違うのだな、ととてもわかりやすいサンプルになってしまっているな・・・と心から残念に思いました。

夢咲ねねちゃんに似た首の長くてスラリとした美しいプロポーションと可愛らしい小顔で、群舞でも華があって一際目立つ素敵な娘役さんなので、お歌と演技の向上を期待したいところですラブラブ

 

★朝水りょう アルフォンゾ公爵 (96期)

ワルいオジサマ。

「アルジェの男」で主人公が出世の階段を上る手助けをする、元ヤン今は政治家の三原じゅん子氏のような総督を鮮やかに演じて、これほどまでに演技力があったとは!と心から拍手を送った朝水先輩。

もともと、凰稀かなめさん似の美貌なのに、どこかニヒルで性格悪そう?な表情故か、意外と役付きがよろしくなかった朝水先輩、ここにきて、星組の誇るオジサマ役者筆頭として活躍されており、安堵しております・・・。

トップさんであろうと先輩であろうと容赦なく攻撃の手を緩めず、恨みを買ったら怖いオジサマを演じさせたら宝塚一ではないでしょうか・・・。

 

★輝咲玲央 資産家フェルナンド (92期)

オレキザキ様。優しいオジサマ。

マノンを金品と甘い言葉で誘惑するオジサマ。

オレキザキ様と言えば、「エルベ」で、紅さんの元恋人であるはるこちゃんの現夫で、やはり貧しい実家を助けるために結婚したはるこちゃんを心から愛している優しい夫君をその深みのあるエエ声と慈愛深い目の演技で印象付けてくれたお方。

今回も、有沙マノンに君には宝飾品が必要だよ・・・と優しく指輪を贈るのに、マノンったら!あなたには彼にはない品があるわ!とロドリゴに言ったり、指輪を無言で投げつけて返したり・・・ヒドイ!

今回オジサマが渋滞していて、普段は決して間違えないのに、小さな黒目がちのキラキラした瞳を持つオジサマ役者、という属性が被る漣レイラさんと間違えてしまいました💦漣さんはお祭りのダンサー筆頭で活躍されていましたね^^

 

★遥斗勇帆 フェンテス隊長 (99期)

歌ウマ175㎝のハルトくん。

オレキザキ様と役替わりで、ロミジュリでは治安の悪いヴェローナを統べる大公閣下としてその美声を響かせてくれました。

時々金髪で前髪をクルンとさえてイケメン枠に滑り込んでくることもあるハルトくんですが、基本は歌ウマオジサマとして、星組の栄えあるオジサマ枠に名を連ねていらっしゃると理解していますニコ

今回の隊長は、バレエではマノンの色仕掛けに惑うオジサマの一人なのですが、今回はレスコー兄に言いくるめられて賄賂で便宜を図ってあげる袖の下オジサマ、でしたね。

それよりも、祭りの歌手でイキイキと活躍されていました^^

今回のフィエスタのカンタオールはハルトくんと夕陽真輝さん。カンタオーラは星影ななさんと瞳きらりさん。ちょっと新鮮なラインナップで、下級生さんから歌上手さんがピックアップされているのかなと。これから本公演でも次第に活躍される方々かもしれませんから、ちょっと覚えておきたいと思います音譜

 

★彩葉玲央 ロペス (97期)

いろはすくん、の愛称で親しまれている可愛いお顔とスラリとしたスタイルで群舞で目立つ彩葉くん。

今回はお芝居のお役としては、弾を込めなくていいと指示したはずの銃に弾が装填されていたことから、弾みでロドリゴの脱出劇に巻き込まれて命を落とす修道院の使用人役・・・で、なんとも可哀そうなxxx😢

小箱公演あるあるで、ほとんどの場面、色々なお役で、特に群舞では得意のしなやかなダンスを、主に同期の綺城さんの斜め後方で踊ってくれていて、長身でキラキラした黒目勝ちの瞳、という共通項のある二人が、このオジサマ大渋滞の舞台におけるオアシスのような・・・爽やかさを供給してくれていました✨

 

★紫月音寧 ロドリゴ母 (92期)

ベテランに優しい(肩たたきはないのかしら?)星組ならではのベテラン娘役さん。他組なら、管理職か、ダンサー、シンガーなどの専門分野に特化した芸を持たないと在団は難しいと思われるところ星組ではなぜか、そのいずれにも当てはまらない生徒さんが大切にされているイメージ。紫月さんも、とりわけ、こういった役柄で重宝されているという印象はなかったのですが、今回の慈愛深いロドリゴ母の演技が出色でした。品があって、押しつけがましくなくてよかったですキラキラ

 

作品としては20年前の瀬奈じゅんさんと彩乃かなみさんが組むきっかけとなった作品で、レスコー兄を蘭寿さん、ミゲルを壮一帆さんが演じたという、クラシカル宝塚の名作・・・というより、佳作、と言う感じの作品でしたが、愛月さんの強い存在感、有沙瞳ちゃんとの相性の良さ、そして星組の錚々たるオジサマ役者の充実ぶりを印象付けてくれる作品でした。

そしてKAATは観やすいですね!どの席からも視界が良いと同時に、濃い艶のあるブラウンのウッディでゆったりとした空間デザインが素敵ですピンク音符