先日、無事正式譲渡が決まった

ひかる君


保護犬の中には

程度の差こそあれ

ひかる君のような

精神的な不安定さを

抱えたままの子がいます。

 

私たち人間は

一方的な思い込みやイメージで

彼らに対して

無意識のうちに

誰にでも懐くことを

要求してしまいがちですが

そもそも、「懐く」ということを

どう私達が捉えているかが

問われているような気がします。

 

犬=人懐こく、寄ってくるもの

という定義のみで

捉えているとするなら

ひかる君のような状態を

抱えた犬に対する悩みや謎は

深まるばかりかもしれません。

 

懐くか

懐かないかというよりも

大切なのは

「繋がる」という感覚。

 

ビビりとして有名な

我が家のココアだけでなく

まこもルイスだって

初めは、全く

繋がっていませんでした。

どんな犬だって

初めはみんな一緒です。

 

犬と繋がるということは

犬の出自や種類などの問題ではなく

人間側の

感覚的な入出力の問題なので

繋がらないと思えば

繋がるために

観察力と想像力を駆使して

創意工夫しながら

アンテナを伸ばすだけのこと。

 

そして、この時に大切なのは

その犬に

必要なだけの時間をかけ

犬を変えてやろうなどとは

思わずに

根気よく向き合うことです。

 

向き合うということは

距離を詰め感情的に接することと

勘違いされている方が時々いますが

そういうことではありません。

 

何もせず

「ただそこに機嫌良く存在している」

ということを

犬に認知させる時間を

持つということです。

 

この時間が犬からの

信頼と尊重を育みます。

 

ちなみに、不安定な犬は

力を抜いて

リラックスしていられません。

だからこそ

ウロウロしたり

物陰に隠れたりして

警戒し、自分の身の安全のために

威嚇したりして、犬なりに

落ち着きたくて必死なのです。


出自にかかわらず

はじめから

落ち着いている子もいれば

落ち着いていない子もいますから

保護犬に限らず

犬との暮らしをスタートさせる時

飼い主の側が

「落ち着きの育み」の重要性に

気づいているかどうかで

犬との暮らしは

必然的に変わってきます。

 

落ち着きを育むための

方法や突破口は

その犬によって違います。

 

10頭いれば

10頭の方法やタイミングがあり

機械を操作するような

万能なマニュアルや

テクニックは存在しません。

 

人間が犬に対して

取るべき態度

必要な態度が

整っていないのに

人間ばかりが偉そうに

いぬをしつけるとかいうのも

正直おかしな考え

ではないかなとさえ思うのです。 


不安定な犬を前にした時

私たち人間がすべきことは

何かを教えるばかりではなく

無意識に自分自身が抱え込んだ

思い込みや

犬のストーリーを手放し

目の前の犬の

声なき声に真摯に

耳を傾けることかもしれません。

 

まずは、自分の犬が

家庭内でどんな風に

暮らしているかを観察し

それを自分や家族が

どんな風に理解しているかを

客観的に見直して

犬が本質的に求めているニーズとの

齟齬がないかをみることが

人と犬の

より良い暮らしの

始まりになるかもしれません。