保護犬に限らず

犬達は

私達が

彼らを

どんな風に扱おうと

檻やケージや

ガラスの向こう側から

こんな気持ちで

私達人間を

見つめているのだろうと

思います。

だからね、
 
身勝手な事なんて
 
出来ないし
 
したくもないのです。
 
 
 
 

「今日、人間を救った」

おそるおそる犬舎を覗きながら

通路を歩いて来たその人と

 

僕の目が合った。
途方にくれてるんだなってことは
すぐにわかった。
そして、その人を
助けてあげなくちゃいけないことも

 

 

すぐにわかった。
 
僕は激しくなりすぎないように
慎重に尻尾を振った。

 

 

その人を怖がらせないように。
その人が僕の犬舎の前で
立ち止まった時

 

僕はちょっと前に出て

粗相が見えないようにさえぎった。

 

 
今日は散歩に出ていないことを
知られたくなかったから。
シェルターの人たちは
いつも忙しくて
たまにはそんな日もある。
 
だけどそのことで
シェルターの人たちが
悪く思われてしまうのは

 

 

イヤなんだ。
 
犬舎のプレートに
書かれた僕のプロフィールを
読んだその人が

 

 

僕のことを哀れだと
思いませんように。
僕はやってくる未来を
楽しみに待っていて

 

 

誰かの役に立ちたいと
思っているんだから。
 
その人はひざまずいて
僕に向かってチュッチュッと
舌を鳴らした。
 
僕はその人を
なぐさめようとして

 

犬舎のバーの隙間に

肩をねじ込んで

顔の片側を押し付けた。

 

 
優しい指先が
僕の首を撫でてくれた。
その人は心の底から
仲間を求めてた
その人の頬に涙が落ちた。

 

 

 
「大丈夫だよ。僕がいるから。」

 

 

と伝えたくて
そっと前足を上げた。
 
犬舎の扉が開けられ
その人のキラキラした笑顔が見えて

 

 

僕は腕の中に飛び込んだ。
 
僕はいつでも
この人を守ることを約束する。 
僕はいつでも
この人のそばにいると約束する。
僕はこの微笑みと
瞳の輝きを絶やさないためなら

 

 

何だってすると約束する。
 
この人が僕のいる通路を
歩いて来てくれて、僕はラッキーだ。
 
この世界には
幸せの待っている通路を
歩いたことのない人が

 

 

たくさんいる。
 
助けの必要な者は
もっとたくさんいる。
 
僕は少なくとも
そのうちの一人を救った。
 
今日、僕は人間を救った。