動物医療の進展はめざましく
日々新しい技術や薬が
開発され続けています。
どんなに高額でも
最新の医療を
受けさせたいと言う飼い主さんは
昨今とても増えていると思います。
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犬も家族の一員と言う
位置づけなればこそ
そうした医療的措置に
望みをつなごうとする気持ちが
痛いほどにわかる、その一方で
それが犬達にとって
さらなる試練になりはしないかと
個人的には考えてしまうのです。

いつかの日の延命を
切望するよりも
今、目の前にある
この一日の幸せを
感じ切って
生きていて欲しい。

明日どうなるか
わからないという点で言えば
皆平等の命です。

のんびりと穏やかに
笑って生きる事は
人にとっても
犬にとっても
長生きするための秘訣です。

なんでもほどほどが
いいのです。
やり過ぎていいことなんて
何一つありません。

もしも、過剰に
犬に何かをしたり
させたりしたいとするなら
自分自身の抱えている何かと
バランスを取ろうとしての
ことかもしれないと
愛情があればこそ
思い至って欲しいのです。

質の良いお散歩や運動
十分な睡眠や
偏りのない適量の食事
オシッコやウンチの
質量の観察。
体拭きやブラッシングの際の
毛質や肌の状態の観察や
筋肉や関節のマッサージ。
声がけや指示出しに対する
反応の観察や
細やかな
コミュニケーションや
スキンシップによる
脳の活性化。
生活環境に点在する
執着や興奮からの解放。

犬との暮らしの様々な関わりが
犬達の病気の予防や早期発見
またはその治療や治癒に
とても深く貢献します。

日々の関わりの薄さを
高度な医療で
補う事は出来ません。
しかしながら、
日々の関わりの深さは
高度な医療を超えるものを
その命に与えられると
個人的には信じています。

延命は私達の
望みではありますが
彼らの望みであるかどうかは
定かではありません。
わかっているのは
私達飼い主の
安らぎと笑顔が
彼らの一番の望みだと
言うことだけです。

もしも明日
自分か自分の犬に
何かあったとして
思い残したり
やり残したと感じることは
なんでしょうか?

病気や老いを予見し
憂いのなかで生きることより
思い残しのない日々を
全力で生きることです。

犬達は私達の
想像以上の感性で
私達人間の
幸せを願い続けています。

彼らの願いに
真摯に報いるためには
私達一人一人が
幸せになる「権利」ではなく
「義務」を背負っていることを
自覚する必要があるのです。

生老病死は
生きることを
恐れに
変える為にあるのではなく
生きることを
より深く
理解する為にあるのです。

生きることに
後ろ向きな人ほど
実は死を
一番恐れていたりします。

犬達には
生きることしか
ありませんが
飼い主の憂いや悲嘆を通して
犬達は得体の知れない
死というものを
初めて理解していきます。

彼らを不安にさせ
脅かすものは
死そのものではなく
私達一人一人の
心の有様なのではないかと
思い至る時
季節が移ろうように
静かに訪れる
老や病や死に対し
絶望せず
悲嘆に明け暮れることもせず
それもまた
同じ一日と思い合える
穏やかで明るさを失わない
逞しい生き方や
暮らし方の実践こそが
犬達から私達人間に
与えられている最大の
課題なのではないかと
思わずにはいられない
今日この頃なのであります。