犬の賢さは
その順応力の高さです。
リードを持つ人が変わるだけで
態度を変える
これ以上の賢さが
あるでしょうか。
何かの拍子に
犬が迷子になった時。
あなたの家に辿り着くのが
犬の賢さではありません。
以前、ある犬が迷子になり
約一ヶ月
たくさんの人が
手を尽くして
探したことがありました。
捜索していた範囲で
チラシを受け取った人の
かなり離れた親戚の家に
似た犬がいると
情報が入り
駆け付けると
探していた犬が
もうすでに
その家の
一員になったような顔をして
そこにいたのです。
その家にはすでに
年老いた犬が
外飼いでいましたが
どうやら
その子のご飯と
その子の寝床で
探していた犬は
暮らしていたようでした。
ある時、いつもなら
ご飯を残す犬が
完食する上に
小屋に入らず
外で寝ていることが
増えたため家族の人が
小屋を覗くと
探していた犬が
いたということでした。
年老いた犬から
おこぼれをもらいながら
こっそり
同居していたなんて。
連れて帰ってみると
なんと、迷子前より…
太っていたのには
思わず笑ってしまいました。
ともかくは
怪我もせずに
見つかって
良かったのですが
探す手を緩めていれば
未だにその子は
消息不明のまま
だったことを思うと
本当にぞっとします。
いくら犬達の
順応性が高くとも
人間社会は犬達にとって
コンクリートジャングルです。
人から逸れ
街を彷徨いながら
食べ物を取ることも
飲み水にさえ
苦労する日々の中で
心ない人間に
命を狙われたり
捕まえられて
売り飛ばされたり
車に轢かれたり
川に落ちて流されたり
病気になったり
餓死したり
実際には
飼い主の元に
戻れないことが
ほとんどなのです。
そんな現実の一方で
迷子犬として
保護されたのにも関わらず
飼い主の元に
帰ることがかなわない
犬達もいます。
自分の犬が迷子になっても
探さないでいる人が
想像以上に多いことには
本当に驚かされます。
迷子になっても
犬は賢いから
ほっておいても勝手に家に
帰って来るだろうというのは
完全な都市伝説です。
犬達が生きようと
どんなに懸命になっても
そこにそれを
きちんと受け止める
人間がいなければ
生きることさえ
許されません。
それがいいとか
悪いとかではなく
現実なのです。
犬達は
こちらがいたずらに
構い過ぎなければ
私達人間を
ただ、ひたすらに観察し
あえて何も
教わることもなく
人の傍で
人の邪魔にならないよう
人に寄り添い続けます。
それこそが
他に類を見ない
犬の賢さなのです。
本来の犬のあり方を無視して
必要以上に介入し
コマンド通りに
彼らを動かすことが
お望みなら
どうぞ犬型ロボットと
お暮らし頂けたらと
思います。
ちなみに
私達が
彼らと同じくらい
彼らを観察することが
出来たなら
彼らの声無き声が
心に広がる瞬間が
誰にでも
訪れるはずです。
そのために
必要なことは。
抱えている犬を
腕や膝から降ろし
横に座らせることです。
抱きしめてばかりいたら
彼らの心を
読むことも
互いの間にある
深い絆に
気づくことも出来ないのです。