犬のしつけ本を
読む人のなかには
犬の取り扱いに困り
その説明書を
求めている方も多いですが
結論から言うと
犬が人間の思い通りに
なることはありません。

正確に言えば
人の望みがどんなに強くても 
犬の道理に合っていなければ
犬は学習しませんし
人の望まない行動でも
犬の道理に合ってしまえば
どんなに止めさせたくても
止めることを学ぶことはないのです。

犬の道理を知らず
テクニックだけを学ぶことは
砂上の楼閣であり
テクニックだけでは
犬の本当の心に近づくことは
出来ないのです。

そして例え
学習出来たとして
生き物である限り
犬にも人にも
100%はありません。

飼い主の私達に出来ることは
完璧を求めることではなく
完璧ではないことを受け入れ
人との生活のすべてを
犬の学びの場に
していくという意識を持ち
前向きな働きかけを
毎日少しずつでも
続けることが大切なのです。

飼い主がまず第一に
やらなければ
ならないことは
後ろめたさ由来の
甘やかしで
犬をグズグズに
することではなく
生活を仕切り
犬の心身のバランスを
整えることです。

いずれの興奮も
すべては
心身のバランスの悪さ
不安定さに宿ります。

犬は本能的に
不安定さを嫌います。 

それは、自分の身の安全を
脅かしかねない空気を
本能的に感じるからです。
これは
どんなに訓練をしても
消すことの出来ない
本能であり
それを興奮で忘れながら
または押し殺しながら
人のために
仕事をしているのが
使役犬と呼ばれる犬達です。

彼らは
人間の都合に合わせた
要求に答えるために
犬からすれば
不自然な興奮と
理不尽な我慢という
過剰なストレスのために
短命に終わることが
多いのです。

飼い主からの
適切な介入のない
犬の勝手な
番犬行動の放置も
良かれと思って
必要以上に興奮させる習慣や
道理に合わない理不尽な抑制も
同じくらいのストレスが
犬にかかっていると考えれば
飼い主がしっかりと
道理を踏まえて
アテンドすることが
犬をいかに楽にするか
理解するのは
容易ではないでしょうか。

訓練やアジリティを
頑張っている方の中には
自分の犬を
思い通りに動かせていると
自信を持っている人が
いるかもしれませんが
それは
自分の犬は
自分の意のままに動くという
人間側の強い思い込みと
犬の側の高い
学習能力の結果です。

まさかの瞬間に
思いがけず
悔やみきれない
後悔をしないために
飼い主は自分の犬を
絶対に
過信しては
ならないのです。

本来の犬の躾は
都合よく
思い通りに動く
ロボットや
ぬいぐるみのように
犬を仕立てることではなく
お互いの存在を
尊重しあう
質の高い暮らしを
学びあうことです。

人と犬に健全な関係性が
育まれていたなら
〇〇しなければならないという
マニュアル的な発想は
どんどん
少なくなっていくはずです。

犬は人間との生活に
順応出来るよう
進化してきた動物です。

人との穏やかな共生こそが
犬の生きる目的
犬らしさの源なのです。

オオカミが
強い群れのリーダーを
求めるのは
命を繋ぐ
捕食のために
必要な道理なのであり
犬は人との共生に
生きる術を
見出した動物なのですから
そもそもの群れの概念が
オオカミのものとは
似て非なるものなのです。

人間だって
これまで別々に暮らしてきた
ふたりが一緒に暮らし始める時
ルールを決めます。
しかし
生活をするなかで
互いを尊重するための
適切な距離感を学ぶのです。

親しき仲にも礼儀あり。
結婚相手にしろ
それが、小さな犬だったにしろ
相手を自分の
思い通りにしたいと
思っている限り
穏やかな暮らしが
訪れることはないのです。