犬を飼ったら
一緒にたくさん遊びたいという方は
多いかもしれませんし
犬は遊ぶのが大好きに
決まっていると
思っている人も多いです。

しかしながら
犬の個性は
犬種を超えて様々で
活発で遊ぶのが大好きな子もいれば
そうでもない子もいたりします。

ドッグランなどに行くと
時々、犬を遊ばせることに
一生懸命な飼い主さんがいます。

日頃あまり
かまってあげられないから
ストレス発散になれば…と
罪滅ぼし的な発想が
根本にあるようですが
ドッグランのような場所で
犬を興奮させることに対しての
危機意識もなく
犬を散々興奮させて
ストレスを
発散させているつもりの人が
とても多いような気がします。

正直、そうした興奮は
ストレスを発散させるどころか
それ以上に
その犬自身のストレスや
危機感を増幅させている
可能性もあるのです。

どんな場合でも
遊びを楽しくするには
厳然としたルールが必要です。
興奮が勝り
ルールがズルズルになると
楽しさが半減するのは
犬も同じなのです。

犬同士の遊びは
互いの存在を意識しながら
興奮を抑えながら
遊びます。
それこそが
犬達の暗黙のルールです。
犬達は遊びながら
側で見ているよりずっと
頭を使っているのです。

ですから人間も
犬と遊ぶ時
遠くにボールを投げて
取りに行かせることを
繰り返すより
鼻先の距離で
ギブ&テイクをテンポ良く
フェイントを入れながら
やったほうが
犬の頭をフル回転させることが
出来るのです。

テンポや
タイミングのいいやり取りは
犬の気分を上げます。
逆にテンポが悪いと
人の意図が分かりづらくなり
意図せず犬を
無駄に焦らすことになり
あらゆる指示に対しての
成功率が下がります。

褒め方やオヤツのやり方も
テンポやタイミングが悪ければ
犬はただ興奮することを
覚えるばかりで
それら一連の流れが
指示に紐づくことだと
認識出来ません。

ですから、まずは
飼い主や人間側が
そうしたテンポや
タイミングの技術を
身につけなければ
犬との意思の疎通は
叶わないのです。

ちなみに
警察犬の多くは
仕事を遊びと捉えています。

ですから
遊び好きな犬ほど
意欲的に
仕事をするようになります。

そうした犬の育成には
生まれつきの気性が
裏支えになりますから
人と遊ぶことが好きで
執着が高く
興奮しやすい方が良いのです。

警察犬の訓練士は
たくさんの幼犬の中から
そうした気性の犬を選び
ある種の抑圧した環境のなかで
ストレスを蓄えさせ
訓練する時間で
そのストレスを爆発させることで
犬の執着と集中といった
「興奮」を磨くのです。

考えてみれば
多くの飼い主さんは
穏やかな家庭犬を望みながら
意図せずに
犬の興奮を磨きあげ
わざわざ
ハンドルの難しい犬に
育てあげているとも
言えるのです。

私は普段から
あまり犬と遊びません。

ボールを投げれば
犬達はそれを追いかけますが
そのことに
私自身
特別な喜びがないので
きっと犬達も
興味がないのかもしれません。
そう考えると
遊びたがっているのは
人間の方かもしれないとも
思うのです。

遊びとはいえ
過度な興奮を
犬のストレスと捉えると
犬に与えるべきは
指示に応えることで得られる
穏やかな充足感です。

遊びやおもちゃの種類を
増やすことよりも
人と犬の
共同作業である
お散歩の質を極めてほしい。

それこそが
穏やかな家庭犬に
育てるために欠かせない
人にとっても
犬にとっても
最高のトレーニングなのだと
私は考えているのです。