犬は常に、他の犬の動向を
五感をフル活用して観察しています。

匂いは、風に乗って情報を犬の鼻先に届け
視覚で相手のボディーランゲージを読み解きます。
相手の犬が、吠えていれば
その声色からさらにその犬の心理状態を探りもします。

ドッグランで犬が対峙する時をよく観察していると
フェンス越しに、威嚇から攻撃に転じかねない
興奮を誘発し合う場合と
フェンス越しに、匂いを嗅ぎ合い
待ち兼ねたように入ってくる犬を囲む場合や
フェンス前を空け少し距離を置いて、
相手の入場を待つ場合など
その犬によって対応が変わることが見て取れます。
この対応の差は
双方の犬の経験のレベルや状態によって
千差万別の反応が見られます。

参考までに、美しい対峙の仕方の一例としては…
飼い主の後に着く形で入場する犬と
その入場を穏やかに待ってさり気なく近づく犬が
互いの匂いを嗅ぎ合うために
お尻に鼻&お尻に鼻でクルクル周る
あの挨拶の儀式を穏やかに終えて
お互いに、その場をサラッと去るか
腰を高く上げて前足を伏せる
「遊ぼうサイン」を出し合う様子が見てとれれば
互いの犬の認知作業は完了。
「信頼」と「尊重」が得られ
その二頭はその場を「シェア」し合うようになります。

お尻の臭いからは、
その犬の性別やおおよその年齢、
興奮のレベルや体調の善し悪し
会ったことがあるかないかなど
ホルモンや分泌物から感じ取れる情報を
瞬時に嗅ぎ分けているようです
この際、お尻の匂いを嗅ぎ合い
相手を知ることは大切ではあるのですが
自分を知ってもらおうとする「態度」として
大切なのではないかとも思うのです。

だからこそ、相手が嗅ぎ終るまで
「待つ」こと自体が「礼儀」であり
その数秒の「我慢」ができるかどうか
その「礼節」をわきまえている相手かどうかで
「信頼」が生まれ、その「信頼」があるからこそ
相手の犬からすれば
自分の匂いを嗅がせてやるかという「尊重」に
繋がるのではないかとも思います。

この一連の過程を穏やかにこなせる犬は
他の犬から、一目置かれるように見受けますし
反対に、その過程をおざなりにして走り出したり
周りの犬の要求にうまく答えられないと
犬としては半人前。犬としてはあるまじき態度として
他の犬に追い回されることが少なくありません。
なぜなら、そうした犬は一事が万事
不躾に犬を追い回したり、吠え立てたり、
トラブルメーカーになりやすい素地が
ある場合が多いからです。

自分の犬がフェンス越しに
全ての犬達に容赦無く
吠えかかられる場合は
自分の犬が、静かで暗い興奮(緊張や不安)を
抱えている場合がありますので
注意して見極めないと、
その暗いエネルギーを嫌う犬達の
ターゲットになるだけでなく
その暗い興奮を爆発させ
その場を修羅場にしてしまう可能性が有ります。

社会化不足と言われる犬の多くは、
犬としての振る舞い方を知らないだけですから
その部分を親代わりの人間がアシストしつつ
他犬との関わりの中で身につけさせる必要があるのです。

犬達には、ルールがあります。

そのルールを頼り、
寄り添いたいのが犬という動物なのです。
無用な争いを避け、安全に生き延びるために。

ルール無視の犬は犬に嫌われますし
ルールを守らない犬を犬は許しません。
犬同士、そのルールを教え合うほどに
犬はルールを求めているのに
そのルールを無視したり、破らせるのは
人間の「甘やかしたい」という無意識の願望と
犬という動物に対する人間側の知識不足です。

「可愛がり」の対象ではなく
「共に生きるパートナー」として
犬を迎える気持ちを持つことが
大切なのかもしれません。

ドッグランに入場する際の
自分の犬と、周りの犬の様子を是非観察して見て下さい。
自分の犬が興奮していたとしたなら
迎える犬達も同じくらい興奮しているはずです。

だからこそ、まずは自分の犬を
落ち着けて入場させることが大切になるのです。
これは、家のドア、部屋のドア
あらゆる境界線の出入りで必要とされる考え方です。

常に人間が場を掌握し
犬を招き入れるのが
人間の役目であり
その人間に従うことこそが
精神的な安定を獲得した
犬の姿なのです。