犬と生活をする上で
犬の情動を感じることがとても大切です。

「情動」とは瞬間的な心の動きです。

犬の情動を感じることは
誰にでも出来ることではありますが
それには、まずご自身の
心理的環境を整え
冷静で穏やかでなければ
情動を見分け
的確な指示を与えることは難しくなります。

また、犬に指示を与える時
顔は笑っているのに
心の中に怒りを抱えていれば
犬に伝わるのは「混乱」だけです。

自分が何を伝えたいか整理したうえで
しっかりと意識し表現すること。

歌を歌う時、心を込めるといいます。
その歌詞の感情を想起しながら歌うことで
この内と外の表現を一致させ
初めてその歌が、聞く側の心に響くものになるということと
感覚的には近いかもしれません。

犬に何かを伝える時のコツは
ブレずに、簡潔で、わかりやすいことです。

そして、「犬の気持ち」という
思い込みや期待やエゴを手放して
犬のありのままを感じる感覚を
しっかり磨いて頂きたいのです。

勿論、目に見える
ボディーランゲージや
犬の出す吠え声や唸り声などの
音を手掛かりにする理論をふまえながらも
感覚的な「感じる」ことを忘れないことです。
しかし、その感覚を掴むのが難しいとしたなら
拙速な理解で「犬の気持ち」を作り上げて
間違った解釈を足場として固めてしまうよりも
まずは、明確なこちらの意思を
伝えることに徹することです。

犬のしつけの世界には様々な言葉や

専門用語が存在します。
その言葉や理論に得てして人は縛られてしまう。
言葉や理論を意識しすぎるがために
本来のベースとなるべき「感じる」という感覚が
後回しになってしまっては
本末転倒なのです。

言葉が通じなくても
相手が怒っているのか
悲しんでいるのかを感じることが人には出来ます。
言葉が通じなくても
怒りや悲しみを人に伝えることも出来ます。

人はその理由に注目して
そこを理解したがります。
その習慣が飼い犬に対しての妄想や物語を生み
犬の意に沿わない解釈に
繋がるのではないかと感じています。

犬の世界はとてもシンプルで
提示された、状況や環境に対して
好きか嫌いか
不快か快適かという二者択一の反応として
表現しているに過ぎません。
これらの瞬間的な反応が「情動」です。
それにいち早く気づくためには
普段から空気や気配を感じるアンテナを磨くことです。

人は感情で動きますが
犬は情動で動きます。

何かを教えようとする際に
大切なのは
その犬が何が好きで何が嫌いかを
丁寧にさぐることです。

これは、食べ物やオモチャの好みを

探るということではなく
人や犬との関わりの中や生活の中での
環境や状況の好みを探るということです。
そして、犬自身も常に
飼い主の動向を観察し
私達の生活の傍で
良くも悪くもこちらを探りながら
学び続けているものなのです。

また、犬を丁寧に観察することで
その犬に対してのアプローチの
幅が広がります。

言われた通りにやってもうまくいかないと
悩まれる方は多いです。
「言われた通りにやる」という時点で
すでに主張としてマインドのレベルは低いのです。
大切なのは、犬のために
して欲しくないことと
させなければならないことを明確に提示することです。

落ち着いて犬と向き合い
冷静な観察を繰り返し
犬を「感じる」マインドを作り上げることで
「ふり」や「マネ」ではなく
その人独自のチャンネルが開き
共に暮らす中での
不自由のない創造的なやり取りが
はじめて可能になります。

犬は人を理解し寄り添うという
特異な進化を遂げた唯一の動物です。
人との共生の長い歴史のなかで
生き延びるために、人の情動に敏感な必要があり
その能力は、人の持つ察知能力を
凌駕するほどに
研ぎ澄まされたものです。

犬からすれば
不自由なのは人間の方かもしれません。

「感じる」こと。
これは、犬を育てる上で
最も大切で必要なことだと
私は思っています。