Willem Dafoeの話の続きです。



 母の記憶によれば、少年時代のWillemはハデなロックスターみたいな風貌。母の父親・Bill Pullmanとは対照的な性格で、思いっきり青春時代を楽しんでいました。モットーは「法に触れるような悪いことさえしなきゃ、何をしたっていいんだぜ」。よく両腕に1人ずつガールフレンドを抱き寄せて歩いたりもしていたそう。同時交際かもね…😹


 14歳で結婚と子供の誕生を経験し、17歳の頃には家事に追われて妻・Valerieの虐待に悩んでいたBillとは大違いです。


 母が思い出したところによると、Valerieはガラの悪い連中をいきなり家に連れてきて、予想外の訪問にBillが慌てたこともあったとか。しかも、押しかけておいて全員が「ビールがない」だの、「早く料理を作れ」と言っておいて出来上がる寸前に「美味しくもなさそうだし、もういい」と引き上げたり、別の時は逆に夜中まで居座ったり、酷いものでした。


 こんな時、近所の人たちはあまりの酷さにValerieと連中を注意したこともあったそうです。


 さらには、だんだんとBillは妻の浮気も疑うようになっていて、必死に子供(=私の母)の前では元気に振る舞おうとしても、涙が隠せないことが増えていました。それでも妻の誠意を信じようとし、結婚の維持への希望を捨てない姿勢は、周りから見ると痛ましいばかりでした。


 もちろん、WillemもBillの虐待に満ちた結婚生活を心配した1人。どれだけいじめられても妻に誠意を尽くすBillを懸命に説得していました。


「よくWillemは家に訪ねてきて私と遊びながら、父を励ましたり、慰めたりしていた。"あんな女、別れろよ"と、彼は言った。"何で我慢する? お前にはもっといい女がいくらでもいるよ。お前の価値がちゃんと分かって、大事にしてくれる女がね。かわいそうに、お前は心も体も傷だらけじゃないか"。でも、父はいつも母を庇った。"何度ももう無理で別れようと思ったことはあるよ。でも、彼女は心の病気だから仕方ない。機嫌がいい日もあるんだよ。それに僕のことは本当に好きだって分かるんだ。辛いことも多いけど、幸せな時もあるし、僕も妻が好きなんだ"」。


 確かに、これは気の毒なほどいじらしいですね…。こんな時、Willemは「やれやれ」と呆れたような顔をして、また説得を続けました。


「Willemは他の人たちと同様に、父をこの環境から救い出そうと必死だった。だから、父がどう言っても諦めなかった。"幸せな時もある、程度じゃダメだ。秤にかけたら辛い時の方が多いんだろ? そうなら別れるべきだよ。離婚は悪いことじゃないんだぜ。誰だって結婚して、合わなきゃ離婚してる。だいたい、お前はまだ若いんだぜ? まだ17だ。お前と同じ年頃の連中を見てみろよ。みんな楽しんでる。俺もそうだ。あの女も勝手なんだから、お前も好きに付き合えよ。お堅いこと言うのは100歳になってからでも遅くないって! 法に触れるような悪いことさえしなきゃ、何をしたっていいんだ。楽しめよ"」。


 いや、確かに考え方がBillとは真反対ですね。でも、この時に関してはWillemの言う通りだと思います。結婚というのは、双方が相手を尊重して初めて成り立つもの。片方が結婚の掟を放棄したのであれば、もう一方も守る義理はありません。仮にValerieが心の病気だったとしても、免罪符になるレベルを越しています。この状態でBillがValerieに忠誠を尽くすのは、割に合いません。

 もちろん、誠実に結婚を維持しようとするBillの姿勢は尊敬に値しますが…。


 Willemはもちろん、近所の人たちは皆、Billの家庭を心配しながら見守っていて、小さかった母に対しては「何かあったらいつでも呼びにいらっしゃいね」と、言ってくれていました。


 そして、ついに呼びに行く事態は起きたのですが…。