小林節 慶応大名誉教授

ここがおかしい 小林節が斬る!
見過ごせない事実誤認「『恩赦』は憲法に書いてある」の嘘
日刊ゲンダイDIGITAL 2019/10/24
 
 
今回の政令恩赦について、私は、それが原理的にも機能的にも不都合であるから、「抜かない刀」にしたらよい――と主張した。
 
 原理的に不都合だということは、「天皇の大御心により罪一統を赦す」と言う語源が国民主権の日本国憲法体制に矛盾する――という意味である。機能的に不都合だということは、有罪確定者の処遇は、本来的に、法務省が中央更生保護審査会の意見を聴して「個別に」対応すべきもので、それを、罪や罰の種類を政令で定めて「まとめて一律に」赦すという行為が正当ではない――ということである。
 
 今回の私見には賛成の反応が大多数であったが、ひとつ見過ごせない反論(事実誤認)があった。それは、「恩赦は憲法に根拠があり、それがダメだというなら改憲しかない」という意見である。

 まず、憲法の7条(天皇の国事行為)6号は「大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権」と明記しており、そこには「恩赦」という文言はない。73条(内閣の職務権限)7号も同じである。つまり、「恩赦」は憲法に根拠のない法律上の用語にすぎないのである。
 
 私が言いたいのは、「恩赦」という王制の遺物としか言いようのない表現は時代錯誤だから法律を改正しろ――ということである。また、行政の一貫としての中央更生保護審査会の活動は拡充して続けるべきだと思う。そして、現憲法が残した天皇の地位が世襲である以上、代替わりは必ずある。しかし、それと犯罪者の「一律赦免」には何の因果関係もない。だから、そのような悪習は法治国家としてやめるべきだと思う。
 
 そういう意味で、憲法上に文言のある大赦、減刑、復権も政府が政令で「一律に」有罪者を赦免することであり、運用上、行わないことはできるはずだ。この大赦等を憲法から削除するために850億円もかけて憲法改正を行うことは政治的エネルギーの浪費であろう。だから、英国のように、王制の遺物である大赦等が憲法上は存続しているが、時代に合わないので「抜かない刀」にすることが政治的知恵であろう――と私は主張しているのである。
 
=== 日刊ゲンダイDIGITAL (ここまで)===
 
 小林節先生のおっしゃることは尤もだと思います。ネトウヨの皆様も、服役中の犯罪者が恩赦を心待ちにして、天皇が代替わりすること、言葉を変えると、死亡することを願うような恩赦はやめた方がよろしいのではないですか?