10%消費増税は戦艦大和特攻に等しき恐るべき不条理
日刊ゲンダイDIGITAL 2019/07/05
 
消費税反対デモ(C)日刊ゲンダイ
 
 
■不条理な大和特攻という大本営決定

 この週末、ある雑誌の企画で吉田満氏の「戦艦大和の最期」という文学作品についての座談会を行った。この作品は、先の大戦末期、沖縄戦に特攻出撃した戦艦大和の、出撃命令が出てから撃沈されるまでの数週間を描いた物語だ。吉田氏はこの大和の乗船員で、上官の脱出命令を受ける形で九死に一生を得て奇跡的に生き残り、無事生還した後に、たった一日でその初稿全文を書き上げたという。
 この作品には、この大和の出撃に対して「現場」が猛反発していた様子が克明に描かれている。大和には一機の戦闘機の護衛もなく、ほぼ丸裸の状態で何百何千というアメリカの雷撃機・攻撃機の猛攻を受けることが必定であり、一切何の戦果を上げること無く轟沈することは、誰の目にも明らかだったからだ。
 しかし、そんな現場の大反対を完全に無視する形で、大本営からの大和出撃令は覆らなかった。そして案の定、誰もが予期した通り大和は徳之島沖で米軍機の猛攻を受け、攻撃開始からたった数時間であえなく撃沈した。
 

■大和特攻に等しき「10%消費増税」
 
旧日本海軍の戦艦大和(C)共同通信社
 
 ただし、そうした現場の兵士達の勇猛果敢な戦いぶりは、その大本営の判断を正当化する論拠にはなり得ない。そもそもわれわれは、「軍事作戦の成果」の視点から現場の幹部全員が猛反対していたという事実、そして、現実は彼らが主張した通りの顛末に終わったという事実をけっして忘れてはならない。
 
 ―――このたび、政府は今年10月に消費税を10%に上げる事を閣議決定し、与党は同内容を公約に掲げて選挙を戦うと言う。
 日本は、消費税10%への増税を通して、激しく疲弊し、日本のデフレは決定的となり、国民の貧困と格差は決定的に拡大し、政府の財政は激しく悪化し、国民に対する社会保障はますます劣化していくことだろう。
 しかも、この連載でも繰り返し紹介したように、そうした認識を持つのは筆者ひとりではない。心ある学者、エコノミストは全員、筆者と同じ認識を持っている。
 そして消費増税を推進する学者にはもはや、説得的に語る言葉は残されていない。あるメディアで増税反対を主張する学者として筆者が登壇したとき、当該メディアが両論併記をするのために増税賛成論者を探したところ、すべての学者・エコノミストがそのオファーを断ったという。いたしかなく筆者が「彼は完璧なる御用学者だからきっと受けてくれますよ」という形である学者を推薦したところ、筆者の読み通り、ようやく彼がそのオファーを受けてくれたという。
 もはやそれほどまでに、消費増税の必要性を理性的に語ることは不可能な状況にあるのだ。
 にもかかわらず、政府・与党は消費税を10%に上げると言う方針を決定した―――。この構図は、「戦艦大和よ特攻すべし」との不条理な大本営決定の構図にぴたりと符合する。
 かくしてわが国はこのままでは、不条理な増税へと突き進み、まるで大和が「案の定」轟沈したように、日本経済は破壊的ダメージを負うことは避けられないだろう。
 
■「減税」に向けた国民の戦いが始まる
 
 しかし、かの大戦はその特攻の直後に敗北を喫したが、この消費増税によって「日本と言う一つの国」が完全に終了するわけではない。増税によって激しく傷つきながらも、日本は日本という国を続けていかなければならない。
 だからこそわれわれは次のように今、覚悟せねばならない。
 すなわち、大和の現場の声がすべて無視されながら特攻に突き進んだように、こうした議論のすべてが無視される形で消費増税が10%になったとするなら、まさにその増税の日から、消費税を「減税」するための戦いが始まるのだ。
 心ある日本国民はまさに今から、その準備を始めねばならないのである。
 
=== 日刊ゲンダイDIGITAL 記事(ここまで)===
 
 
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