今日もジャックはケンと英語、ゼノはカエデと数学のお勉強をしていて、とある課題に遭遇しました。

ケンはイギリスに移動してからパブに行くことを目標にしているので、ジャックが実践で使える英語を身につけさせようと映画を漁り、ちょっと古いながらも参考になるものを見つけ出し、みんなで見てみました。
パブの男性店員が学校の校長先生をしているお客の男性とドタバタな日常生活を送るイギリスのコメディ映画で、パブの店員はAustin(オースティン)という名前、明らかに今でいうパリピ。
レザーのショートパンツに同じくレザーのロングブーツがトレードマークのスレンダーな男性で、頭はセクシーに刈り上げ、ちょっとオカマっぽいキャラクター。
そして校長先生を演じる男性の名前はMr.Ziploq(ジップロックさん)。
ふくよかなハゲ頭で温厚、紳士的で穏やかな性格をした小心者ながら毎回Austinに振り回され、Austinの様々な依頼を「僕にできるはずがない…!」と電話の受話器を握りしめながら言うわりに、持ち前の人脈を駆使して立ち向かう70年代の作品。
もう、ハゲ頭というだけでツボなのに、名前がまさかのジップロック。
そしてAustinはパブの店員なのにベビーシッターを押し付けられて赤ちゃんのファルにされたり、窃盗グループに誘拐されて身柄を拘束されたり、車に水たまりの水をパシャッ!と大量にかけられたり、パブのキッチンが爆発したり、喋る大きな蛇に襲われたりと毎日何かしらのハプニングに見舞われ、その度に警察ではなくMr.Ziploqに助けを求め、「なんとかして…!」が口癖。
イギリスは100年前から出される料理が変わらないことが多いので、50年前の作品に出てきたメニューは当然あり、初めて英語を身につけるならオーダーの仕方は参考になりますし、トイレの呼び方もAustinはtoiletと言い、Mr.Ziploqはlooと言うので、新しいパブならAustin、古いパブならMr.Ziploqの言い方を真似すればOKな優れ物。
トイレというものは寄宿学校ではlooを使い、私とジャックは臨機応変に使い分けることができるんですが、ゼノはエリート姣だったので使い分けておらず、日本で知らずに使ってドン引きされた単語。
スウェーデンではtoiletを使います。

みんなでひとしきり爆笑し、珍しく感情に乏しいゼノもお腹を抱えて涙を流しながら笑い、ケンが「ありえねー!」と言っていたら、ラストは道端のスノーマン(雪だるま)にAustinが顔面パンチされ、殴り飛ばされて終わりました。
イギリスにあんなに面白い映画があったなんて…。
ジャックもこの映画はリアルタイムではなく、ジャックの姉で美人3姉妹の長女エリザベスが幼稚園の頃に流行したんだそうです。

そんな大爆笑の映画を見終わってから、カエデは頭を切り替えてゼノに数学を教わり、ゼノの説明を私が日本語に訳していたところ、「排気量を7%減らして…」という課題が現れました。
カエデはアメリカの企業のパートナーになっている会社に勤務していて、機械を開発する上で必要な数値を求めて研究チームに報告する業務を負っているので、持参した問題はほぼ機械絡みのもの。
ゼノはもともと数学が得意だったけど専門的なことは誰かに習ったわけではなく、自分で本を読んだだけで理解して身につけてしまったようで、数学に関しては天才のジャックを超え、今のところゼノの頭脳を理解することができるのはお父さんだけ。

私が説明していたら、ケンが「俺いつも何%引けって言われるとわかんなくなるんだよね…」ということで、1日のお勉強の目安をクリアした後でゼノが説明したところ、問題はメールマガジンなどでよくあるこれ。
「夏のクリアランスセール!全品表示価格の35%off!」
というもの。
しかしゼノが説明してもケンにはわからなかったので、私が簡単に35%offは商品の65%の料金を支払うって意味だから値段に0.65をかければいいので、例えば488SEKの35%offfは488×0.65だから317SEK、計算式は488×(1-035)だと教えたら、「なんでカッコが出てくんの!?」とのこと。
「パーセンテージは引かなくていいの…?」と、お決まりの「眉を時計の8時20分に下げ、大きな目を更に開いて哀れを誘う顔」で訴えかけたところ、「そこか!それ引くからカッコか!」と言って納得したようです。

試しに299SEKの43%offはいくら?とケンに質問してみたところ、299×(1-0.43)の式は作れたんですが、299000-299×43と言い出したので、299×0.57すればいいんじゃないの?と聞いてみたら、「なんで!?つかマリアちゃん詳しすぎじゃね!?」と言われ、すかさずカエデに「カッコ先に計算しろよ。お前頭大丈夫か?」と指摘され、ようやく()の使い道を思い出した27歳。
日本円の19,999円の28%offも19999×(1-0.28)だから19999×0.72=14,399円というのも1999900×…と途方もない計算を始めたので、199×2=200×2-2のようになるべく簡単にして計算すると教えたら、「わかったわかった!工夫して計算するやつじゃん!」と完全に思い出しました。
なんでもケンは○%offと言われたらこの計算の仕方が思い出せなかったようで、50%付近の数値なら約半額、75%になったら半分の半分、10%程度なら1,000円から100円のような目安で大体これくらい、という器用な考え方をしていたそうです。

実はこんな面倒な方法を使わなくてもスマートフォンの計算機で正確な数値を出せると言ったらケンは知らず、聞いたこともないと言うので、計算機を使って実践してみました。
15,520SEKの26%offは計算機のボタンを15520、-、26、%、=と押すと計算してくれると教えたら、「4年前に言ってくれ!」と言われましたが、聞いていなかった私にはどうすることもできません。
4年前とはケンが転職し、部下になった年。
そもそも計算機というものはイギリス発祥説と日本説がありますが、本格的に使っているのは明らかに日本なので、「学校で習わないの?」という素朴な疑問を投げかけてみたところ、ケンは「絶対習ってない!」と言い、カエデは「そこまで詳しく習わないっす。俺も%は就職してから使ったんで…」ということ。

聞いていたジャックが「イギリスでは○%offの計算の仕方も計算機の使い方も大半の人が知らないよ?就職してから知らない人の多さに驚いたからね?」と言うので、そういえば私も学校では習わなかったような…?と思い、友達の美女4人とヴォルとガイにチャットで聞いてみたところ、美女4人は「計算機なんて見たことあったかしら?(あります)」、「セールの価格なんてレジを通さなきゃわからないわよ?(わかります)」「計算機は見たことはあるけど足し算しか使ったことがないわね…」「マリアが覚えてなければ私たちが思い出すのは無理よ…」と、中には計算機の存在すら忘れた友達がいることがわかり、ちょっとしたショックを受けました。
先生の名前すら忘れている子もいるので、先生よりも計算機を覚えていたらそれもどうかと思いますが…。
でも記憶力がいいヴォルは「ルートの計算で使ったじゃーん!」と言い、IT関係の仕事をするガイは「俺は計算機よりもパソコンかな…」と言っているので、たぶん使ったのはごくわずかな項目だけだったんじゃないかと思います。

私は計算機で遊んでいたら看護学校の校長先生をしていたモルモルが教えてくれて、ゼノはセバスチャンが会社を経営しているから子供の頃に教えてもらい、ジャックはどうやって覚えたかは忘れたけど知っている、という状態。
でもジャックの妻だったレイチェルは20%offなら0.8をかければいいということは生涯理解できず、寄宿学校が一緒だった友達は○%offの計算はできるけど計算機の使い方は私が言うまで知らなかったと言っているので、これは国民性かもしれないということで片付けました。

友達の美女の2人が「その前に授業で数学なんて選択してたかしら?(しました)」と、一緒に勉強していた時間に何をやっていたんだと思いましたが、そういえばクラスで数学が一番得意で成績が良かったのがヴォルで、次に私とガイがいつも同レベルだったので、今まで「数学はちょっと得意」だったところ、「数学はかなり得意」な部類だったようです。
更にケンの極め付けが、未だに「tanθ」の「θ」が読めないというので、「それはシータって読むんだよ…?」とささやいたら、「俺英語嫌いでさ!」と言っていますが、θは英語ではなくギリシャ語だと教えたところ、「ずっと英語だと思ってたわ!俺やべーじゃん!」と爆笑し、カエデに「お前授業で何聞いてたんだよ…」と呆れられました。
ケンは「英語アレルギー」だったそうで(そんな病気はない)、外国語を耳にすると眠くなり、意識が遠のいていたと言っています。

これを聞いたジャックは今日も苦笑いし、ゼノはカエデが日本から持って来ていた課題を全て解き終わり、高度な知能のせいで生まれるストレスを発散できたのか、お腹がいっぱいになって眠る仔犬のような顔で寝ました。
やっぱり宇宙人だった…。