全くのネタバレです、注意!!


ひっさびさ、大人の感動するアニメを観た。


ご存じ宮崎駿の新作。


ずうっと温めてきたというだけあって、凄く深い。


愛、とか、夢 とか この國の行く末 とか 全部ひっくるめて


矛盾の中で生きていても人はなおかつ夢を追ってしまう。そして夢は狂気をも孕む。


宮崎アニメの 「子供の好きな夢いっぱい・・・」を期待すると裏切られる。

タイトルから 聖子ちゃんの曲を想像していると、これも全く違う。


のちに 大日本帝国海軍が誇る ゼロ戦を設計した 堀越二郎の物語


大正時代、田舎に育ったひとりの少年が飛行機の設計者になろうと決意する。

美しい風のような飛行機を造りたいと夢見る。
やがて少年は帝国大学に進み、大軍需産業のエリート技師となって才能を開花させ、ついに航空史にのこる美しい機体を造りあげる。

三菱A6M1、後の海軍零式艦上戦闘機いわゆるゼロ戦である。


大正から昭和へ、

関東大震災、世界恐慌、失業、貧困と結核、革命とファシズム、言論弾圧

そして戦争へとひた走る日本。


その中で夢を追い挫折を繰り返す二郎と 死の病を背負った菜穂子との出会いと別れ・・・。


映画は震災で始まり 空襲で終わる。




こういうシチュエーションだったら、今までの宮崎アニメは 反戦・・・とか


少年の夢・・・とかを描くのだろうけど そこが全く違う。


多分、本当の大人なら その深いところが凄くよくわかるんじゃないかなぁ。


二郎が作りたいのは美しい飛行機だけど、それは同時に兵器でもあるわけで。

登場人物に「飛行機は戦争の道具でもないし、商売の手立てでもない。美しい夢だ」と言わせてはいるけれど 大いなる矛盾をそのまま放っている。



映像も素敵だ。


緑の高原。 蒼い空と白い雲。人々の貧しさ、市電や陸蒸気 まんま大正ロマンの町並み。


ただ、エンディングTMの「ひこうき雲」はちょっと・・・どうかなぁ。


魔女の宅急便とは違うんだからユーミンを使う必要があったのかどうか。


それと、声に凄い役者が揃ってる。あえて、木訥とした二郎の表情のなさが良かったりして。


ただ、想像するしかないけれど 昔の日本人はこうだったのかな、


素敵だな、と思うシーンもたくさん。


ナウシカやもののけ姫 紅の豚が好きな私だけど、これは良かったです。