ヤツが出没するのは毎日ではなかった。


しかし。


その犬並みの愛想の良さにほだされた父は、あろうことか自分の猫のカリカリ(食べ残しだけど)で接待してしまったのだ。


『野良だったらどーすんの。居付いたら困るでしょ!』と私は怒ったが


『あんなに人懐こいと、何か美味しいものでもあげないと悪いかなと思って…。』なんて意味不明な言い訳をしていた。


確かに、あの凄まじいスリスリゴロゴロ攻撃。相手を逃すものかとじっと見つめる仕草。

猫の魅力全開でアピールする様は、猫好きの親父にはひとたまりもなかったであろう。

人が歩けば、ふくらはぎ側面に自分の横腹をぴったり沿わせて歩くところは犬っぽかったけど…。


それから案の定、毎日通ってくるようになった。


こいつは野良!と(勝手に)判断した父は、ヤツに名前をつけた。”チビクロ”


『あの童話のチビクロ・サンボ?』


『いーや。小ちゃくて黒いから。』


やっぱりね。14年間一緒に暮らした愛犬もまっ白だったんで”シロちゃん”だったからそんなものだろう。


2007年6月頃のお話。