普段、日本の友達に「スペイン人がいかに適当か」を説明しても、なかなか信じてもらえない。 「人種は違えど同じ人間なのだから、いくらなんでもそんな事はないだろう」なんて言われてしまう。 単に俺が大袈裟に話しているように思うらしい。
しかし、今日はちゃんと証拠を持ってきた。
今、俺の請けている仕事のひとつ、イベリコ豚を日本へ輸出している企業からの案件。 日本で年明けに開催される「FOODEX」という食品展示会用の大判ポスターデザインだ。
この企業は今年5月、6月末日を納期とした契約で、スペインの売れっ子広告デザイナーにポスターデザインを依頼した。 しかし、6月末日になっても連絡が来ず、問い合わせてみると「もう少し納期を遅らせてくれ」との事。 それから一週間置きに進捗を伺うも、納期は延び延びになるばかり。 8月になり、いい加減に痺れを切らせて「どうなっているんだ!」と苦情を申し立てると、「バケーション(家族旅行)の準備でこっちも忙しいんだ!」と逆ギレをされたらしい。
その後はバケーションに入ったデザイナーと2ヶ月連絡が付かず、再びコンタクトが取れたのは10月末。 いい加減に納品するよう急かすと、「うちはクオリティ重視だから時間が掛かる。あと1ヶ月待て」と言われ、既に代金も支払い済みなので渋々待つ事に。
そして待つこと1ヶ月、11月末に納品されたデザインは、とんでもない手抜きだった。
こんな酷い写り込みが全部で14箇所。
お客様は当然、これに苦情を付けた。
「この映り込みはどう見ても不自然だろ?
大きな展示会に出展するんだから、ちゃんと作ってくれ。
その為に高い金を払ったんだ。」
するとデザイナーは息を荒げ、「写ってもいない箇所の写り込みが作れるわけ無い!そんなに言うなら後は自分でやれ」と言い放ち、作りかけのデータをまとめてお客様に突き返した。
展示会までにわずか1ヶ月あまりしか時間の無い状態で、デザイナーがまさかのボイコット。 お客様もテンパってしまい、手当たり次第に辺りへ声を掛け、1ヶ月でコレを作れる人はいないかと探し回った。
その時、俺の友達(いつかの写真に写っていた女性・Yさん)が「いい仕事する子いるよ」と紹介してくれ、俺に仕事が回ってきた。
客「写っていない箇所の写り込みは作れないものですか?」
俺「可能です」
写っていない部分は想像して描けばいい。 ただそれだけの事だ。
この仕事を愛していれば、そのくらいの手間はなんて事ない。
写っていない部分がどうなっているか分からなければ、肉屋へ出向いて写真を撮ればいい。 それでも分からなければお客様に聞けばいい。 絵が描けなければ写真を撮って、それを加工して貼り付ければいい。 方法はいくらでもある。 そのいずれも試みず「不可能だ」と投げ出すなど言語道断。
仕事への愛って、こういう事だと思う。
プロである以上、自分の仕事を愛するのは至極当然の事だし、プライドに懸けても最善を尽くしてから弱音を吐くべきだと思っている。 腕に自信が無ければ仕事を選べ。 売れっ子だか何だか知らないが、大した知恵も技術も持ち合わせていない素人が、「デザイナー」なんて肩書きを誇らしげに掲げるな。
きっと、Bさんだって同じ事を言うさ。
彼もまた、こういった糞デザイナーにうんざりしている一人だから。 そもそも我々は、「デザイナー」だの「アーティスト」だのという肩書きを鬱陶しく(または恥ずかしく)感じている。 その響きの優雅さとは裏腹に、名が売れなければ地味で金にならない仕事だから。

