旦那パパと旦那ママは、年に一度だけ年末年始にしか会えない。

旦那パパは日本、旦那ママはこちら(スペイン)に住んでいるからだ。

それが今年は、会えなくなってしまった。 旦那パパが給料・ボーナス20パーセントカットという、不況の煽りをモロに受けてしまったためだ。

旦那パパは大企業のお偉いさんだが、毎月スペインへ30万ほど仕送りしているのだから、そんなに余裕も無い。 諸々の疾患を患っている旦那ママの緊急時に備えて、貯蓄もしなくてはならない。 なので、今年は会いに来れなくなってしまった。


旦那ママはとても悲しんでいたが、「死に別れたわけでもないし、縁が切れたわけでもないのだから、そんなに悲観せずとも大丈夫だ」と慰めた。 「我々息子夫婦が傍にいるから、一緒にもう一年待ちましょう」とも。 そして、なんとか旦那ママの元気を取り戻し、落ち着かせる事ができた。



しかし、旦那ママは「じゃあ、年末年始は旅行しましょう」と言い出した。

「そんなお金は無い。 パパだって切り詰めて生活しているんだから、こっちも貯蓄しないと」と口を挟んだら、「安い貧乏旅行なら大丈夫だから!!」とゴネ始めた。


「そもそも今回だって、ママが毎月少しずつでも貯蓄をしていれば、パパだって緊急時の備えをせず済んだのだから、年末に来れたんだよ」と、これで何度目になるのか分からんが貯蓄の大切さを説くと、旦那ママはしょげてしもうた。


旦那も旦那ママも貯金ゼロ。 二人とも貯金する余裕が無いと言っているが、余裕が無いのではなく切り詰める努力をしていないだけだ。 少し多くお金が入ればたちまち散財し、どうしてもお金が必要な緊急時、俺や旦那パパにすがる。 「助けてくれる人がいるから、貯金しなくても大丈夫」と、はなっから人の財産をあてにしているのだ。



今回の旦那ママの旅行計画は、俺がバッサリ斬り捨てた。

旦那が横から「でも俺、今月ボーナス入るし・・・」と余計な事を言ったが、「店(旦那の職場)が潰れたらどうするんだ?失業保険だけでは生活出来ないし、このご時勢ですぐに職が見付かるとも限らない。今月のボーナスを貯蓄に回すだけで2ヶ月は生き延びられるんだぞ」と説得。

旦那ママはそれに対して、「その時は、あなた達が私と一緒に暮らせば家賃分の負担が無くなるから大丈夫」なんて言ったのだが、「今の家の解約金や修繕費はどうする?犬は1家屋あたり3頭までしか飼えない(法律上)のに、一緒に暮らせば4頭になる。どうするつもりだ?」と畳み掛けると沈黙。

「口でエミチンにかなうわけがない」と旦那も苦笑し、何とか旅行計画は中止の方向へ。



我々が少し考えれば分かる事でも、事細かな説明をしなければ伝わらない相手もいる。 それがお金や生活に直結する事象なら、こちらが主導権を握り続けなくては破綻する。 こういった面では完全に2対1の構図になってしまっているが、生活を守る為には負けられないのだ。


まぁ、金銭面で俺が間違った判断をゴリ押しした試しは無いので、彼らも割と素直に聞き入れてくれるようにはなったんだけどね……。 このラテン親子、今までどうやって生きてきたんだ?と疑問が湧いてくる。