ユーロッパの大都市で、よくこのような広場を見かけますね。中央は王の騎馬像、広場は整った四角い形、周辺は見事に調和のとれた建物で、中に由緒のある老舗が多い。そして王の栄華が過ぎ去った現在では、ここは大体アーチストが活躍している場所になり、市民がのんびりと憩いを取る場所にもなっている。


 マヨール広場(Plaza Mayor)はまさにこのような存在である。場所はマドリッドの中心にあるSol駅の南西方向。かつて旧市街の中心に据えたこの広場は、フェリペ3世が1619年に完成させた、4階建てのレンガ色建物に四方を囲まれた広々としている広場。火災は3回もあり、改装を重ねた末、現在の形になったのは1953年とのこと。


荘周夢蝶-マヨール広場

 存在感の薄かったフェリペ3世。父2世の仕事に追いまくられる姿を見て嫌気が差したか、政務を寵臣へ丸投げし、ひたすら狩猟を愉しんだという。こういうことを思い出すと、かの騎馬像に妙に感心し、おそらくこれは王の真の姿だろう。戦場を走りまくるのではなく、鹿やうさぎを追っていたばかりだったけど。。
荘周夢蝶-フェリペ3世

広場の四隅にカフェのテラスガ出ている。華やかな王家の儀式を眺めることが出来なくなったが、連れとの会話をのんびりと交わしながらマドリッドの陽光を愉しむ場所となっている。


荘周夢蝶-露天カフェ

似顔絵やマドリッドの象徴たるもののポスターを描く絵師たちが回廊の付近に集まっている。
荘周夢蝶-似顔絵の絵師たち


 マヨール広場南側のクチリェロエ門(Arco de Cuchilleros)を下りた通りの名はCalle de Toledo。偶然であろうか、まさか私が翌日にトレドを訪ねようとすることを暗示しているように。。ちなみに、地球の歩き方に書かれたことだが、この通りの近くに、メソンと呼ばれる居酒屋が並び、夕暮れどきともなると飲んで陽気に歌う人たちが集まるそうだ。1人飲みに全く興味のない私が狙ったのは、この通りの先に二つの塔が見えるサン・イシドロ教会(Santa Iglesia de San Isidro)。
荘周夢蝶-クチリェロス門を下る通り

距離の問題で、教会の姿をレンズにきれいに収めることが出来ない。ファッサードに見える二人の人物の彫刻は聖イシドロとその妻だろうか。その下にハプスブルク家の紋章二頭の鷲が見える。
荘周夢蝶-サン・イシドロ教会

荘周夢蝶-ハプスブルク家の紋章が見える

教会の建物は17世紀初めに、日本でも有名なイエスズ会創始メンバーの1人、聖フランシスコ・サビエルを祀るスペイン初のイエズス教会として造られたものである。18世紀後半にイエスズ会が追放された後は、聖イシドロを祀る教会になり、1885年~1993年までマドリッドの大聖堂として使われていたという。


 聖イシドロは11世紀に生きていたとされるマドリッド近郊の農民出身の人で、井戸に落ちた子供を生き返らせたり、岩の間から湧き水を噴出させたりと、数多くの奇跡をもたらした聖人として、マドリッドで厚い信仰を受けているという。ちなみにプラド美術館には、スペインで活躍したグラナダ出身の画家アロンソ・カーノの代表作「聖イシドロと井戸の奇蹟」(1646-48)が所蔵されている。この画家は先輩弟子のベラスケスとも親交を持ち、その画風がベラスケスからの影響を受けていたとも言われる。


アロンソ・カーノ「聖イシドロと井戸の奇蹟」(1646-48)
荘周夢蝶-聖イシドロと井戸の奇跡

さすがにかつて大聖堂として活躍していたというだけに、教会の中は重厚な装飾が施されており、物々しい雰囲気。祭壇に聖イシドロの棺が置かれており、腐敗していないという聖イシドロの遺骸が納められている。
荘周夢蝶-サン・イシドロ教会の内部


いよいよ次は、トレドの話が始まる。これがまた長い一日に。。