ルーブル美術館は百科全書的な存在であるとしたら、プラド美術館は個性的な専門書になるだろう。百科全書は豊かな世界を見せてくれる一方、様々な情報が混じりあっているため、「これは素晴らしい!」「これはわからないなぁ。。」とのように、鑑賞の情緒に濃淡はつけられる。でも専門書は違う。興味のない人はないだろうが、この分野に感心がある人にとってまさに毒薬並みの殺傷力がある。


 また、よく知られるように、エル・グレコ、ベラスケス、ゴヤ等画家の作品に関して、プラド美術館は質とも量とも一流の所蔵品を所有し、非常に個性的なオーラを放つ存在とも言える。これは、本当にフェリペ2世とフェリペ4世のすぐれた芸術鑑賞の目に感謝しないといけない。君主としての才能は別として、この二人の審美眼によって、世界三大美術館とされるプラド美術館の基礎を築き上げたことに間違いない。


 残念ながら、館内は写真禁止である。まぁ、逆に作品に食い込んで集中して鑑賞できるので、いいこととも言えよう。王室コレクションというだけにスケールの大きい作品が多くて、時代も14世紀~18世紀を中心としているため、宗教画や物語性豊かな作品は大集合。モウ~大好物ばかり。。。


 ここで、中野京子氏の「ハプスブルク家12の物語」、「ブルボン王朝12の物語」、「怖い絵」シリーズから得た予備知識が大いに役立ってくれて、絵を見るだけに青い血の一族がまるで目の前で蘇ってきたように、こちらがドキドキするばかり。ディエゴ・ベラスケスの「ラス・メニーナス」(1656)とゴヤの「カルロス四世家族像」(1800~01)を筆頭に置かないといけないが、フランシスコ・プラディーリャの「狂女フアナ」(1877)、ティツィアーノ・ヴィチェリオの「カール五世騎馬像」(1548)と「軍服姿のフェリペ皇太子」(1551)、ルーベンスの「アンヌ・ドートリッシュ」(1622)・・・これぞ、至福の旅である。


 さらに、名前だけをあげると、絶対見逃してはいけない作品に、ブリューゲルの「死の勝利」、ボッシュの「快楽の園」と「七つの大罪」、ムリーリョの「無原罪のお宿り」をはじめとする聖母マリアシリーズ、ルーベンスの「三美神」、ゴヤの黒い絵シリーズと2枚のマハ、デューラーの「自画像」、ティツィアーノの「ダナエ」、エル・グレコの「聖三位一体」や「羊飼いたちの礼拝」、レンブランドの「アルテミス」などなど、タイトルを書き出すだけで血が騒ぐほどの傑作がいっぱいある。本当に一枚一枚が全部素晴らしい、改めてコレクターのセンスに敬意を表したい。


プラド美術館の正面。ベラスケスの像が迎えてくれる。
荘周夢蝶-プラド美術館正面


荘周夢蝶-ベラスケスの像

北側のチケット売り場がある入り口。向かい合うところに、ゴヤの堂々たる像が立っている。裸のマハの姿が下に刻まれている。
荘周夢蝶-ヘロモニス口

荘周夢蝶-ゴヤの像

途中休憩で館内のレストランで軽食を取った。広々としたセルフサービス式のレストランであるが、ほしいものを選んでレジで会計を済ませたあと、好きな席で食べるスタイルになっている。私はここのサラダがとても気に入った。値段は手頃で、とにかく具沢山。本当に美味しかった。
荘周夢蝶-プラド美術館のレストラン

荘周夢蝶-サラダ、気に入った