『 宝 物 』

寒い冬の朝 お母さんは川で洗濯をしていた

弟をおんぶして
となりに私の存在を感じながら

冷たい水で 手はいつも赤ぎれだらけ

お母さんの手と横顔に
切なくなりながらも

私は幸せだった

お母さんの隣で しゃがんでいることが
私はとても幸せだった

そんな季節があった

今もあたたかい
想い出という名の宝物


Tresure





『 名 前 』


名前を書く時
「字が上手ね」って
ほめられるとうれしかった

だけど どんなにがんばっても
かなわない人がいる

それは 書道の先生や 著名な人ではなく
私の「お母さん」

誰よりも 私の名前を書いてくれた人
名札や お道具箱のおはじき一つ一つに
私の名前を書いてくれた人

その想いのこもった字にはかなわない

…ずっとね



name





桜ほんのひとこと桜


『 宝 物 』

私が幼い頃、洗濯物は川でゆすいでいた。
大きなバケツを二つ抱えて、
毎朝お母さんは川まで歩いて、洗濯をしていた。
洗濯に加え、男の人と同じ畑仕事、
十人分の三食の食事、子育て、掃除、
お風呂も家にはなくて、
近くの共同浴場まで入りに行っていた。
自分でも、いつの時代の話だろう…と思う。
そして、遠い実家…
お母さんは幸せだったのかなって思う。
思い出すと、少し苦いけれど、
私にとっては大切な宝物のような時間だった。
お母さんとの大切な時間だった。