わたしには特別だったこのお産
並々ならぬ覚悟だった
マレの時に叶えられなかった願いを
叶える最後のチャンス
何も抱えないままに
ただ嬉しいだけの涙と愛おしい時間を
夫と両親たちにプレゼントしたかった
お守りがわりに持っていった「マレタイム」
出産ぎりぎりに読み終えた
わたしにはこの経験がある
それが支えだった
すべての痛みは蘇り
あの頃の記憶とともに押し寄せてきて
ただ強さだけが求められる時間はしんどくて
でもどこか懐かしかった
そんな時目の前に救世主が現れて
わたしを導いてくれた
なんとなくこの人にすべてを託したい
そう思った
まだ出会ってたった2日の助産師さん
担当ではなかったのだけれど
痛みに揉まれながらこの人がいいと
お願いをしていた
不思議なもので
でもこれが運命で
この人だから頑張れたような気がする
目の前に現れた命は力強かった
大きな産声は奇跡だった
泣いた
ふつうに泣いた
ただ嬉しくて泣いた
ただ愛おしくて泣いた
あぁ、わたしたち生きてる
そこに見えたのは穏やかな
嬉しそうなパパの顔だった
最高の瞬間だった
あの頃と同じように
最後はパパと分娩室に2人きりになって
幸せを噛みしめた
ありがとう
“パパ、いてくれてありがとう”
マレタイム
