四方田 犬彦
ウィーンの日本大使館が、日墺国交150周年記念事業である美術展で、アベのそっくりさんのパロディ動画と、血がにじんだ放射線防護服のオブジェが展示されているというので、大使館の公認を取り消した。
ああ、またしても日本は恥をかいた。芸術に対する検閲が公然と行われているという風評を、世界に拡散させてしまった。失点大である。中国や北朝鮮の芸術表現の弾圧と検閲を嗤う資格はもうとうにない。
しかし日本の芸術家にとって生き延びる道がないわけではない。1980年代~90年代の北京のアーティストの真似をすることだ。この時期、彼らはあえてヤバそうな展覧会を企画すると、まず西洋のバイヤーやキューレイターに連絡を取り、これは秘密情報ですがねといって、展覧会の日取りを教えた。当日、展覧会は開催され、ただちに官憲のよって撤収された。アーティストたちはあらかじめ英語で準備された声明を発表し、われわれ芸術家は人間の自由と解放、民主主義のために、たとえ獄に下っても戦うゾといった。もちろんこの事件は欧米のメディアにただちに伝わり、アーティストたちの作品は抵抗のアートとして高く買い上がられた。彼らのなかには巨万の富と国際的知名度を獲得したものも現れた。
日本のアーティストも北京から30年遅れだけれど、海外のメディアを巻き込んで、同じことをしてみればどうか。