ハーブ&ドロシー
87分 - ドキュメンタリー
監督: 佐々木芽生 -
監督: 佐々木芽生 -
アメリカの国立美術館“ナショナルギャラリー“に2000点あまりのアート作品を寄付して話題となったヴォーゲル夫妻の軌跡を追ったドキュメンタリー。慎ましい生活の中から、30年以上に渡って作品を収集してきた夫妻。ふたりのアートに対する真摯な思いと日常を、日本人のジャーナリスト・佐々木芽生監督が捉えた心温まる1作だ。
上映時間
11:00 13:00 15:00 17:00 19:00
妻ドロシーの給料で生活し、夫ハーブの給料で作品を買う。2人は1960年代、まだ評価が定まらないミニマルアートやコンセプチュアルアートに狙いをつけた。毎日多くの個展に足を運び、アーティストのスタジオを訪ねた。
コレクション自体が一つの作品であるかのように、2人は狭いアパートに集めた4千数百点ものアートを売ったことがない。アートバブルも暴落も無縁だった。多くの美術館から譲渡の申し込みがあったコレクションを寄贈されたナショナルギャラリーは、「緊急時に2人が作品を売らなくてもいいように」謝礼を支払ったが、夫妻はギャラリーに還元すべくその金でも作品を買ったという。
ハーブ88歳、ドロシー75歳。映画では過去と現在を行き来しながら、アートとともにあった2人の暮らしを映し出す。
「彼らになぜこの作品が好きか聞いてもちゃんとした答えが返ってこない。困っていたら、あるアーティストが『だからあの2人はすばらしいんだ』と言うんです。『みんな理屈をこねるけど2人の目を見てごらん、ものすごい目で作品を見るだろう』って。見て見てとにかく見て、見えてくるものを自分で発見する。それで2人の目のアップを必ず撮るようにしました」と佐々木さんは話す。
クリスト&ジャンヌクロードや、リチャード・タトルほか、たくさんのアーティストが楽しげに2人を語る。「誰も見向きもしない時から熱心に見てくれたからつい安く売ってしまう」「地下鉄やタクシーで持ち帰れないものはほしがらない」などなど。
本作は佐々木さんが初めて手がけた映画だ。アメリカの六つの映画祭で賞を取った。
彼らのもとには、それまでに何人もの著名な監督が訪ねていた。「2人はいちども撮影依頼を断ってないそうです。でも『お金ができたらまた来る』と言って、戻ってきた人がいなかった。私はまったくの素人だから、お金を作ってから撮るという発想がなかっただけ」
制作途中でハーブの健康状態が悪化、助成金や個人の寄付のほか制作費の足りないぶんは自宅を抵当に借り4年かけて完成させた。
試写会を自分のギャラリーで開くなど公開に協力している小山登美夫さんは「いろんな場で夫妻を見かけ、コレクターとして尊敬されているのがわかった。美術を買うことが彼らの生活のすべてになっているからだ」と話す。(編集委員・佐久間文子)
◇
映画は11月、東京都渋谷区のシアター・イメージフォーラムで公開される。10月に、横浜美術館など首都圏各地で監督のトークと上映会が開かれる予定だ。