冷蔵庫を正面から撮ったシリーズ、「冷蔵庫 ICE BOX」などで有名。
夫の島尾伸三との共著で、中国の一般庶民の生活や雑貨などを撮ったシリーズがある。
読み取れる別の物語
本を写真に撮る。不思議に思う人もいるかもしれない。たしかに本は読むもので、撮るものじゃない。だけど潮田登久子(うしおだ・とくこ)(昭和15年生まれ)の作品には、大切にしたい何かが写っている。読むだけではわからない価値といえるかもしれない。
「家に1冊、きれいな本があって、オブジェとして撮ったらどうだろうと思ったんですね」
いろいろな人の台所を訪ねて写真集「冷蔵庫」(平成8年)を刊行した潮田が、書籍を撮り始めたのは約10年前。たまたま知人が図書館長だった。協力を得て撮影を始めたが、最初は手探り状態だったという。「どう撮っていいかわからないし、貴重なものですし。さわるだけで白い手袋が真っ茶色になったり、革が崩れ落ちたりして…」
異国情緒の漂う稀書(きしょ)、愛読のはてに背表紙が破れた古書…。撮影された本はそれぞれ、肖像とか風貌(ふうぼう)と擬人化したくなるほど表情豊か。掲載作は、バラバラになってしまわないように、紙のひもで縛ってあった洋書。「包帯をしているみたい」に見えたという。