「にせキューバ人たち」 | ノイズのなぐさめ

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歪んだ美意識。
ちっぽけ 些々たる しがない
たわい無い 些末 末梢的
スマート、スィート、デンジャラス
大切なのは長く働くこと。

トム・ウェイツ一世一代の大傑作アルバム「RAIN DOGS」は、この人のギターなくしてはありえなかったと言い切ってしまってもよいと思います。もちろんマーク自身にとっても出世作。キースやグレッグ・E・スミス等豪華なゲスト陣にまったく引けをとらない素晴らしいギター・プレイを披露しております。
 1954年ニュージャージー州ニューアーク生まれ。ティーンエイジャーの頃、クラシック・ギタリスト/作曲家のフランツ・カセウスに師事する一方で、さまざまなガレージ・バンドでプレイ。78年にニューヨークに移り、ウィルソン・ピケットやジャズ・オルガンのブラザー・ジャック・マクダフ等のバンドに参加。この辺り凄く興味あるんですが、音源あるのかな…?追跡調査しときます。その後リアルトーンズやアップタウン・ホーンズ・バンドに参加したのち、84 年よりアート・リンゼイの後釜としてラウンジ・リザーズに加入。このへんからトムとの交流も始まるワケですな。そして「RAIN DOGS」で一躍名を上げてからはエルヴィス・コステロやマリアンヌ・フェイスフルらに重用される一方でソロ活動にも力を入れていきます。やはりラウンジ・リザーズ絡みで、ジョン・ゾーンやらニッティング・ファクトリー周辺の人たちとつるんでることが多いです。ショーン・レノンなんかとも仲いいみたいですね。自己名義のアルバムではトムのバンドでもおなじみのラルフ・カーネイやアンソニー・コールマン等とルートレス・コスモポリタンズを結成。上の「REQUIEM FOR WHAT'S-HIS-NAME」は、そのセカンド・アルバム。内容は、そうですね…トムのアイランド時代の作品のトンがった部分だけを抽出してさらに2 ひねりほどねじ曲げた感じ、かな?要するに前衛/フリーの少々修行系。まあ、ラウンジ・リザーズ等での活動の延長線上にあるものです。そういうの好きな人以外にはおすすめしませんが、有名なエリントン・ナンバーをパンキッシュにアレンジした“CARAVAN”はめちゃカッコいいです。もともとかなりアグレッシブな感じの曲(エリントン~ミンガス~ローチの「MONEY JUNGLE」必聴!)ですが、なかなかハマってます。他、“YO,I KILLED YOUR GOD”(ユダヤ人のパンクというイメージから作ったそう)“COMMIT A CRIME”などのパンキッシュなナンバーは、僕はかなり好きだったりします。
 ロス・クーバノス・ポスティソス(にせキューバ人たち)は98年にスタートしたマークの新しいプロジェクト。
「このプロジェクトはトム・ウェイツのアルバムや80年代中期の自分のアルバムの中に感じとれるスタイルから自らを切り離して新しい境地に挑戦したもの」
という本作は、マークがリスペクトするラテン音楽界の大巨匠、アルセニオ・ロドリゲスに関連した曲でまとめられています。
「単なる楽しみのために、このアルバムを録音したんだよ」
そして「にせキューバ人たち」という、人を喰ったバンド名については
「俺は正統性を主張するために、もしくは俺達がキューバ音楽を知りつくしていることを証明するためにこのプロジェクトを世に出したんじゃないんだ。これはキューバ古典音楽、アルセニオ・ロドリゲスをはじめとするキューバ人音楽家の音を工夫して自分の音楽に取り入れた結果でしかないのさ」
ということだそうです。中身の方はめちゃカッコ良し。盟友アンソニー・コールマンやオーネット・コールマンとこのブラッド・ジョーンズ、マイアミ・サウンド・マシーンのロバート・J・ロドリゲス、ジョン・メデスキなどかなり豪華な面子。なんともチープなうさん臭さとパワフルさが見事にブレンドされており、ノリノリです。セカンドの「MUY DIVERTIDO!(VERY ENTERTAINING)」もおススメだす。
 「春夏秋冬」は日本人シンガー、シオンのセカンド・アルバム。シオンもトムのファンということで、マークほかラウンジ・リザーズのメンバー総出演。全体にかなり暗くヘヴィな雰囲気のアルバムで、ヒリヒリとした痛みや苛立ちが伝わってきます。ここ数年のシオンとはずいぶん雰囲気が(ルックス含め)違います。10年程前、いろいろあってかなり落ち気味だった頃よく聴いてました。色んな意味で思い出深いアルバムです。マークは1曲目からすぐにソレと分かるギターを弾いてますね。アルバムタイトル曲はもちろん泉谷しげるのあの曲。でろでろにチューニングを下げたベースがなんとも言えぬ閉塞感のようなものを感じさせます。ラストの“クロージング・タイム”はそのタイトル通り、トムが歌詞に出てきます。余談ですが、“このままが”で歌ってるのは女のことじゃなくて猫のことだ、と昔本人がインタビューで語っておりました。なお、マークは本作のほか「SION 10+1」、「I DON'T LIKE MYSELF」、「SONGS」などのシオンのアルバムにも参加しているほか、ホッピー神山や梅津和時、巻上公一など日本人ミュージシャンのアルバムに何枚か参加してます。もうひとつついでに、「STRANGE BUT TRUE」にはエヴァン・ルーリーのバンドが参加してます。こちらも良いです。
ちなみにオフィシャル・サイトはこちら。

http://www1.linkclub.or.jp/~waits/musics/marc.html