1950年代から写真を撮り始め、2000年にその生涯を閉じたイタリアの写真家マリオ・ジャコメッリは、戦後の写真界を代表する写真家の一人です。しかし、イタリア北東部のセニガリアで生まれ、ほとんどの作品をその街で撮り続けてきたため、その長い活動期間と欧米での高い評価に比べると、わが国において知られることの少ない写真家といえるでしょう。
いま、日本でもジャコメッリと同じ2000年に亡くなった植田正治や、その2年後に亡くなった緑川洋一といった地方に根を下ろして作家活動を行ったアマチュア写真家が見直されています。一地方に腰を据えた作風はイメージを素早く作り、消費しようと待ちかまえる都会的趣向にそぐわない面がありました。それは、じっくりと凝視を求める作風だともいえます。
まとまった展覧会としては日本初となる本展では、「ホスピス」「スカンノ」「若き司祭たち」「大地」などの代表作はもちろん、最晩年のシリーズまでも網羅し、構成いたしました。ジャコメッリの作品からは、詩や絵画に近い語法を読み取られるかもしれません。そのように見えることも、また写真表現が持つ豊かさなのです。強烈なハイコントラストで「死」と「生」に立ち向かい、孤高の写真表現でリアルさを抽象したわが国では「写真界の知られざる巨人」、マリオ・ジャコメッリの世界を是非、この機会にご鑑賞ください。
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