フォルテピアノ
モーツァルト時代のピアノ (Ferdinand Hofmann, Vienna c1790)
■フォルテピアノ Fortepiano とは・・・?
「フォルテピアノ」とは、初期のピアノを現代のピアノと区別する際の便宜的な呼称である。この呼称は、18世紀後半のドイツでは、C・P・E・バッハやテュルクをはじめとして、数多くの作曲家や著述家によって広く用いられた。19世紀に入ると、ドイツの作曲家たちは「ピアノフォルテ」やドイツ語の「ハンマークラヴィーア」などを多く用いるようになったが、ウィーンのピアノ製作家たちは世紀の半ばに至るまで自らを「フォルテピアノ製作者Fortepiano Macher」と称した。今日では、歴史的ピアノの呼称として半ば定着するに至っているが、スラヴ系諸言語では現代のピアノを意味する語として普通に使用されていることから、時折誤解や混乱を招いている。
ピアノを発明したのは、周知にように、フィレンツェのメディチ家の楽器工房主任であったバルトロメオ・クリストフォリ(1655-1732)であった。現在の研究では、「1700年頃」ということになっている。以前、「1698年説」が強く主張されたこともあったが、現在のところ、この主張の裏付けは確認することが出来ない。
しかし、これは「今日的意味」におけるピアノに限っての話である。「弦を叩いて音を出す鍵盤楽器」というより広い意味においては、既に1440年頃、チェンバロのページでも紹介したズウォレのアンリ・アルノーがブルゴーニュ公に提出した「ドゥルチェ・メロス」の図面というのがある。ドゥルチェ・メロスとはダルシマー――即ち、プサルテリウムと同じような形状の弦楽器だが、弦をはじくプサルテリウムとは異なり、弦をばちで叩いて音を出す――のことだが、この場合には「鍵盤付きダルシマー」を意味している。
クリストフォリにしても、ピアノを発明した際には、「鍵盤付きダルシマーの開発」を意識していたことは間違いないと思われる。従って、ピアノという楽器の発想の始まりは、少なくともクリストフォリの発明以前3世紀半余りも時代を遡るのである。