限りない「あはれ」 | ノイズのなぐさめ

ノイズのなぐさめ

歪んだ美意識。
ちっぽけ 些々たる しがない
たわい無い 些末 末梢的
スマート、スィート、デンジャラス
大切なのは長く働くこと。

訳】(詩歌でない)普通の文章は、思うところをこまごまと言い続けて、条理は詳しく通じますけれども、やはり言うに言われぬ感情や心情のおもむきは、歌でなくては述べがたいのであります。その言うに言われぬ情趣の深いところが歌に表現されるのは何故かと言いますと、歌は言語表現に文(あや)――特別な曲折や変化をつけるからであります。その文(あや)によって、限りない「あはれ」も表れるのであります。さてその歌というものは、普通の文章のように物事の内容を詳細に述べるものではなく、またその言葉に深い意義道理が籠っているものでもありません。ただ心に深く感じたところをふと口に出したまでのことですけれども、その中に際限もなく奧深い情趣を持つのです。それは歌の表現に文(あや)がある故であります。

補足】「文(あや)」とは、模様、特に織物の模様。言語表現上の「技巧」「言い回し」などを言うこともありますが、むろん宣長はそうした意味で用いているのではないでしょう。同じ本の中で宣長は「文(あや)あるとは、詞のよくととのひそろひて、乱れぬことなり。大方五言か七言にととのひたるが、古今雅俗にわたりて、ほどよきなり」とも言っており、五七調などの音数律も「文(あや)」の要素と考えていたようです。「文(あや)」に《調和のとれた秩序ある美》を見ていたことは間違いないでしょう。

本居宣長『石上私淑語(いそのかみささめごと)』より