皆さんご機嫌よう
如何お過ごしですか、稀人です。
本日は親知らず抜歯記念ということでVtuberではあまりやられていない(であろう)、抜歯レポをやりたいと思い、こちらに記録しておこうと思います。
何故動画ではなく文章なのか、面倒なこと受け合いですが、最後まで読んで頂ければわかりますのでどうかお付き合いください。
それでは始めましょう。

ー◆ー

予約の時間からおよそ待つこと数分。

「稀人さーん」

受付のお姉さんから声がかかる。

「(アディオス、皆。わたくし、逝ってくるぜ)あ、はあい」

歯科でよく見るリクライニングも今日ばかりは断頭台に見えた。
先生と歯科衛生士のマスクをあたかも毒を吸わぬよう被るガスマスクに幻視した頃、先生がゆっくりと治療の内容と注意事項を話してくれる。

「それでは椅子、倒しますね」

椅子とは私の比喩表現か。
いや、違うか。

「まずは治療する辺りの歯を超音波のブラシで磨いていきますね。これしないと痛みや腫れが出てしまう事がありますので」

歯茎辺りに鋭い違和感が触る。
磨き残しとかあるとこういう時に多少の恥ずかしさがある。

「(これはあまり痛くないんだな…チリチリする感じはあるが…)」

ひとしきり終わると麻酔の時間だ。
これが怖い。
あまりにおそろしい初めの一歩。
小さな針が刺さる違和感と直後感じる鋭い小さな痛み。
ゆっくり、ゆっくり失われていく感覚と
歯茎が肥大化していくような強烈な違和感。
これが何より不快なのだ。
麻酔が効くまでにはそんなに時間はかからなかった。
早い段階で効いてくるのはかなり珍しい。

「では、歯茎触って大丈夫なら治療やっていきますね。痛かったり違和感が激しいようなら手を上げて下さい。ちょっとずつ力加えますからね」

知っている。
上げたら上げたで「動かないで下さいね」と注意されるインターネットでよく見るアレだ。
流石に今回ばかりは素直にリアクションを取らせてもらうぞ、こちらは何しろ親知らずなのだ。

「(さて、レポのために感覚は覚えておかないとな…)」

ギリギリギリ…と鈍い音を立て、少し強めの歯間ブラシをされているような感覚と、
直後、急に何かを引き抜くような感触。
なんだ、何が起こっている。
痛くもなければ強烈な感覚もない。
全く何が起こっているのかわからず顔にあてられた布越しに虚空を見つめ続けていると、
唐突に声。

「椅子、上げますね」

イス、アゲマスネ?
待ってくれちょっと待ってくれ。
この流れで急に上げられる椅子の意味が全くわからない。
アクションシーンが始まったかと思えば突如流れ出す次回予告。
呆けているわたくしに「口をゆっくりとゆすいでください」と歯科衛生士の声。
言われたまま口をゆすぎ「…という状況になっていて、これが抜けた歯です」とまざまざと今まで治療をサボってきた現実を突き付けられる。
あまり見たくはなかった。
目も当てられない、とまではいかないがこんなにもゆっくりと歯を見つめた事があっただろうか。
造り物を見せられているような気分だ。

「抜けた歯、持って帰られますか?」
と聞かれるが当然答は「No」だ。
何に使うんだそんなもの。
綺麗な状態ならまだしもちょっと状態も状態だ。……説明は省かせて頂こう。

「では今回はこれでおしまいです。お疲れ様でした。血を止めるために3分くらいガーゼ噛んでてくださいね」

口の中に突っ込まれたガーゼに何か不思議な生温い感覚を覚えながらボケッとモニターを眺め、血が止まったらしいことを確認してもらい、終了。
あとはもうあまりに早い話だった。
「今日は禁酒、熱いものも避けろ、血が止まらなかったりしたら連絡してくれ」
といった留意事項の説明。

ひとしきりそれも終わるとお会計を済ませ、病院を出た。
帰りにコンビニでコーヒーでも、と思ったが「あまりに冷たいものもよせ。死にたいのか」と脳裏で理性のようなものが語りかけてきた為、断念。

帰り道、歩道の脇で砂浴びをする雀を愛しく思いつつ、「ちょっとレポにするには体験として弱かったか…」と謎の思考があり、今日はおしまい。

ー◆ー

いかがでしたでしょうか。
本当はこれを動画に出来ればもっと見やすかったのでしょうが、作り終える頃にはもう歯科医にも通わなくなっていそうで多少やりづらさを感じたので、自分の中の質感がリアルなうちに文章に起こしました。

いや、読みづらいですね。
どうも書き方のクセを感じましたが、
今はまだ何も食べられないわたくしのかわりにこれもまた「味わい」と取って頂ければと思います。

それでは、口の中に広がる鉄分を感じつつ今回はこれにて。
ごきげんよう。