『天国に手紙を』


君がいなくなってから、もう何度目の夏だろう。 


僕には、ひとつだけ変な癖がある。 


君が好きだったものを見つけると写真を撮ってしまうこと。


君が好きだったぬいぐるみを見つけたとき。 


君が好きなアーティストのCDを見つけた時。


僕はスマートフォンを取り出して、写真を撮る。 


そして、メールを開く。


宛先は、君。 


『今日、こんなの見つけたよ』
写真を添えて、送信する。 


送ったあとで気づく。 


もう、届かないのに。 


メールの向こう側で、君が褒めてくれることはない。


それでも、僕はやめられなかった。 


君に見せたかったものが、あまりにもたくさんあるから。 


だから今日、僕はメールではなく、

手紙を書くことにした。 


封筒の中には、君が好きだったものをたくさん詰めよう。 


写真を何枚も。 

小さな押し花を一枚。 

君が好きだったぬいぐるみ。


そして、便箋いっぱいに言葉を書く。


「天国にいる君へ」
そう書いて、僕はペンを止める。 


何を書こう。 


伝えたいことは、たくさんあるのに、いざ文字にしようとすると、胸の奥につかえてしまう。 


そうだ。
今日の話をしよう。 


今日ね、素敵な写真を撮ったんだ。 


緑の草原を歩いていたら、小さなお花を見つけた。 


誰かに見つけてもらえるかなんて分からない場所で、ひっそりと咲いていた。 


それでも、その花はとても綺麗だった。


風に揺れても、雨が降っても。 


誰かに褒めてもらえるわけでもないのに、凛々しく咲いていた。 


僕は、その花を見て思ったんだ。 


僕も、この花みたいになりたいって。 


誰かに見つけてもらうためじゃなくて。


誰かに綺麗だと言ってもらうためでもなくて。 


自分が生きるために。 


自分の人生を、自分らしく生きるために。 


凛々しく生きていきたいって。 


辛いことも、まだたくさんある。 


泣きたくなる日もある。 


それでもね。 

最近は、楽しいことも見つけられるようになったんだ。 


誰かの幸せを願えるようにもなった。 


君のおかげだよ。 


君がいなくなったあの日から、僕はずっと悲しみの中にいた。 


でも、その悲しみの中で見つけた小さな優しさが、少しずつ僕を変えてくれた。 


だから今度は、僕が誰かの幸せを願える人になりたい。 


君が僕にくれたものを、今度は僕が誰かに渡していきたい。 


君は、このお手紙を読んでくれるかな。


笑ってくれるかな。 


「何してるんだ」と呆れながら笑ってくれたりするかな。 


ねえ。


そっちはどうだい? 


元気にしてる? 


僕はまだ、こっちで生きてるよ。 


泣いたり、笑ったり。 


綺麗なものを見つけたり。 


君に見せたくなったり。


だから、もう少し待っていて。 


いつか僕がそっちへ行く日が来たら、そのときは――
特大のお土産話を持っていくよ。 


君に話したかったことを、全部持っていく。 


「あのね、聞いてよ」
って。 


きっと、朝まで話しても足りないくらい。


だからその日まで。 


僕はもう少し、こっちで生きてみる。 


君が好きだった青空も。 


君が好きだったぬいぐるみも。


君が願った人の幸せも。


たくさん見つけておくよ。 


そしてまた、手紙を書く。


天国にいる君へ。 


今日も僕は、ちゃんと生きてるよ。