この本にどうやって出会ったのか、よく覚えていません。 
 もともと内田樹さんが大好きで、何かのサイトかネット広告か Amazon かよく分からないですけど、紹介されていたのでさっさとポチしたのかなと思います🤣。

 最近ちょっと内田さんの本から遠ざかっていたなという反省とともにこの本を読んだのですけど、やはり彼はすごい方です。
 彼は、私が私の意識化の中にはあってもまだ言葉として形作ることが出来てない、考えとして確立されていない、エピソードと言うか『原思考』とでも言うべきものを、実にうまく言語化される方です。『そうそう言いたかったのびっくりおいで!どうして私の考えてることがこの人はこんなにもわかるんだろう』というような錯覚に落ちます。
 よく、「太宰を読むとどうしてこの人は俺のことを俺以上にこんなにも分かっているんだろうと思う人がいる」という話を聞きますけど、私にとっては内田樹さんこそが、まさにそのような方々にとっての太宰治のような存在です。

 本レビューを書こうと思うのですけど、どこをどう書いたらいいのか分からないくらい、サマリーなんかとても書けないくらい、もう全てがサマリーと言ったような本でした。

 タイトルにある "学ばない子どもたち" はどうしてそうなってしまったのか、"働かない若者たち" はどうしてそうなってしまったのかということを解き明かしてくださっているのですが、本当に簡単に言うと、今の若者が子どもだったくらいの頃から、日本のあり方、子ども達の生きる環境が、労働主体から消費主体へと変化してしまって、子どもが自分の価値で持って物事を判断する、判断して良いのだという【対価交換】の意識を早くに持たされすぎてしまった。そしてそれと共に、時間的な流れが排除されてしまった。

 だから学校で先生ひらがなを教えようとしても、「それは何の意味があるのですか、どういう役に立つのですか」ということをまず子どもは先生に質問してしまう。そしてその先生の答えが、自分がこれから45分なり50分なりじっと座って 先生の話を聞き、言われたように作業するという "苦役" に見合った価値があると判断すればそれを行う、ということを、自らが決定しているというのです。なのでその価値に見合わないと判断すれば当然学ぶことを拒否するわけです。

 しかし、子どもの価値判断の元となる 基準なんて、たかが知れてます。ほんの数年しか生きておらず、ほんのちょっとの経験しかしてないわけです。でも誰もその判断基準への担保はしてくれないわけです。
 そこが大きな問題で、学びというのは逆説的なんですけども、訳の分からないものを学ぶことから始まるわけで、学び終わって初めてその学びが何だったのかということが分かるもので。そこに対価交換の思想が入り込んでいることが問題なのだとおっしゃっています。

 働かない若者たちにしても同じです。
 彼らは「自分の生き方は自分で決める、他人には迷惑かけてないし」と自己決定権を行使して働かない選択をしているのですけども、そのには労働することとその賃金はイコールでなくてはならないという思想が働いています。
 しかし労働というのは、それに見合う 賃金が支払われないのは当然のことで、その『余剰金』を、経営者は設備投資をしたり、それによって会社を大きくしたりするわけなので、労働というのは常に余剰を生んで当たり前だと彼は言います。
 でも働かない若者たにちは、自分が病気になったりいずれ老人になったりという時間的な流れが組み込まれておらず、"今" しか見ておらず "今" だけを生きているわけです。
 とすると、彼らが病気や障害者になって働けなくなったり (そもそも働いてないですけど笑) 、もう少し時が経って高齢者になった時、誰が彼らを支えるのか。教育を受ける権利を放棄し、働かずに税金も納めずにそうなったのだから野垂れ死にしなさいと言っていいのか。 

 この問いに対する答えが、本当に内田さん的で。私はやっぱりこの人はすごく暖かい人だなと思いました。

 彼は、『あなたたちがそうなっても、私たちはあなたたちを見捨てないよ』というメッセージを出し続けることが、働かない若者たち、ニート化に歯止めをかける強力な方法なのではないかと言います。このことは彼の色んな著書の根底に流れているなと私は感じるのですけど、社会の役に立てない人、自分で経済活動を行って生きていけない人を決して見捨てず、『どんな人にも存在意義があり、そうやって迷惑をかけ、迷惑をかけられて人間社会が成り立っていることが、我々が共存する社会の大原則なのだ』ということを、彼はいつも彼の大原則として携えていらっしゃると感じます。
 しかも、それが同情ではなく、構造的アプローチでもって論じてくださるので (この本の中でではないですけど) 、卑屈にならずに素直に受け入れられますラブ

 なんだかぐちゃぐちゃなレビューになってしまいましたし、内容をほんのちょっとしか触れていません笑い泣きアセアセ
 本当に内容の濃い素晴らしい本でした。

 堪能したーーー爆笑ルンルンキラキララブラブ