まだ、許せないのですか?
『全てが想定内』を読んだ友人から、このような質問を受けた。夫からの心理的DVについて書いたくだりを読んでのことだった。
虚を衝かれた、という感じではなかったが、思いもかけない質問に驚いた。戸惑って、え?と返すと、いや、そんな風に感じたから、と言われた。
暫し、この事について考えた。あのときのDVを、私は、どう捉えているのだろうかと。
夫からの心理的DVは、結婚当初から始まった。いや、正確に言えばその前からと言えるのかもしれない。デートの度に、「はい、携帯」と、手を出される。見せろ、ということなのだ。嫌だと言えば何かやましいことでもあるのかと思われそうで、黙って差し出していた。結婚と同時に携帯の番号とメールアドレスを変えさせられ、異性に教えることは一切禁止された。でも、夫と人生を共にすることを覚悟したから結婚したのだ。異を唱えることは、しなかった。
結婚してからも、夫の縛りはきつかった。毎朝起きると直ぐに夜に見た夢の内容を聞かれる。眠いし、夢なんて仔細に渡って覚えていなかったりもする。だけど、執拗に質問され、思い出させられる。苦しかった。
毎日の生活も、緊張の連続だった。夫は突然喋らなくなり、冷たいオーラを全開にする。いつ機嫌が悪くなるか、原因が何なのか、全くわからなかった。一旦機嫌が悪くなると、何日もろくに口を利いてもらえなかった。いつ地雷を踏むかと、いつもびくびくしていた。家の中の空気が、チクチクと痛かった。
当時私は、50㎞の道のりを一時間半かけて車で仕事に通っていた。仕事は児童虐待の対応。親への対応で難しい局面を迎えることも多く、次の日の面接場面を夢の中でシミュレーションすることも度々だった。残業も多かったが、夫も11時を過ぎて帰宅するのが当たり前。先に夕食を済ませるようなことは勿論許されなかった。毎日3時間しか眠れなかった。
睡眠不足での車の運転、ストレスのかかる仕事、くつろげない家の中。。限界だった。このままだと、鬱になって死んでしまうかもと思った。仕事を、辞めた。
辞めるとき、これでもう、夫とは対等ではないのだ、経済的に夫に頼らなければ生きていけなくなるのだ、離婚したくてもできなくなったのだ、と思ったことを覚えている。そして、これでいいんだ、これで、夫が機嫌が悪くなることも減るだろう、女中さんにでもなったと思うことにしようと思ったことも、覚えている。学習的無気力状態に近かったのかもしれない。
ある出来事をきっかけに、DVはピタリと止んだ。
私は、自分で決めて仕事を辞めた。でも、、ずっと思っていたのではなかろうか。あのとき、夫が優しかったら、あんな空気の家庭じゃなかったら、私は今も仕事を続けていられたのじゃないかと、ずっと、思い続けてきたのかもしれない。私は、自分手決めたことを、無意識にせよ、夫のせいにして今まで生きてきたのかもしれない。
その友人は、大切なことを私に気づかせてくれた。
しかし、待てよ。
そんなに思いが滲み出てたか??
読み返してみた。
いや、そんなことはなかろう。他の事柄と等しくただ事実を述べているだけだ。
ははぁ
この友人は、投影しているのだなぁ、きっと。
自分の人生において、あのくだりにびびっと反応してしまう、バックグラウンドがあるのだなぁ、と。確かに、その友人には、そのように感じてしまってもおかしくない過去がある。
まぁそれはさておき、己の中にくすぶっている責任転嫁な気持ちを意識化させてくれたことにはとても感謝している。この気持ちがこの先どう変化していくのかはわからないけれど、冷静に眺めることはできるようになるだろうし、夫を表立って責めることもないように、コントロールできるかもしれない。これまでもそんなつもりはなかったけれど、知らず知らず滲み出ていた可能性は否定できない。
すまん。