「悪女の深情け」と「負けん気なジョーク」 | 悪女の深情けと負けん気なジョーク

悪女の深情けと負けん気なジョーク

僕のおかんと先輩怪物オネェさんたちの派手で物騒な言行録です

僕のおかんは豪傑で優しい人だった。

怒るとクソ怖いけど怒り終えると台風一過よろしく通常運行。

何かを問うても求めても期待通りの答え(モノ)など帰ってきた試しがない。

そんな彼女の座右の銘は「悪女の深情け」。本来なら「ブスゆえに抱く嫉妬心」を意味する言葉なのだが、彼女によれば「気質の強い女の止められない情け」だそうだ。日本語の意味までしれっと変えてしまう(彼女の周りだけだが)おかん。

 

僕はゲイ。しかも中年のおっさん(おばさん?)。僕がゲイバーなどのゲイ・コミュニティーに出入りし始めた頃は今とは雰囲気も世代も年代もまあ違う。いいのか悪いのかは知らんけど怪物はたまた妖怪のような伝説のお姐さんたちがたくさんいらした。

機知に富んだ丁寧で素早い切り返しや博学な会話、洒落た出で立ちなどに憧れたものです。そして、この街の古いオネエはおしなべて中島みゆきのコアなファン。僕も例外なくそう。だって、聴きなさいって教わったんだもの(笑)。

中島みゆきのある歌の一節にこんなものがある。

「氷の国の人は涙のかわりに 負けん気なジョークを言う

昨日あった出来事も みんなみんな包んで」

僕は初めてゲイバーに出始めた頃、この街の古めのオネエ言葉文化が正直苦手だった。でもこの中島みゆきの歌と目の前の光景がある日突然結び付き、合点がいってしまった。あ、この人たちは、昨日あった出来事もみんなみんな包んで、いつもよりも強い毒と負けん気にあふれた言葉を投げかけているのだと。

 

おかんも大昔にゲイバーで出会ったお姐さんたちのほとんども、みんな天国にお引越しされた。僕が忘れてしまわないうちに、おかんやお姐さんたちの言行録を少しずつ記していきたいと思います。