今日は、ロバート・チャイルズ氏。
愛称は「ボブ」。
150年以上に渡るイギリスのブラスバンドの歴史の中で、如何にブラスバンドが、市民の生活に密着していたかを物語る事実が枚挙に暇がないほどある。
伝統を受け継ぐ国民性なのか、親から子へ、子から孫へと受け継がれていく姿が、ブラスバンド界にもたくさん見られる。
今イギリスで活躍しているプレイヤーや指揮者達も、親子代々ブラスバンドに携わっている人が多い。
「ブラスバンドの神様」と言われたハリー・モーティマーもお父さんの影響でブラスバンドを始め、弟のレックスやアレックスの3兄弟は、やがてブラスバンドの指揮者となった。
このファミリーのイギリスのブラスバンド界に捧げた貢献がブラスバンドを発展させた礎でもある。
時は現代、イギリスに留まることなく、世界のブラスバンドに大きく貢献しているファミリーがある。
お父さんが指揮するブラスバンドで、ユーフォニアムを吹き始めたロバート&ニコラス・チャイルズ兄弟は、今、イギリス・ブラスバンド界の頂点に君臨する指揮者と言ってもいいだろう。
ボブは、コーリー・バンド、ニックはブラック・ダイクの指揮者として大活躍しているのは皆さんも周知のこと。
チャイルズ兄弟としてセットでユーフォニアム演奏活動をしたこともある。
もちろん彼らの演奏は横綱級の腕前。
当時は、イギリスの「若貴兄弟」と言われたこともある。
その所以は、彼らの体格。
巨漢だったからである。
今は、ニックが50キロも減量したため、関取には見えないが・・・。
ボブの話に戻そう。
ボブは現在、ウェールズの名門、コーリー・バンドの指揮者。
息子はコーリーのプリンシパル・ユーフォを務めるデイヴィッド・チャイルズ。
デイヴィッドもチャイルズ家のDNAを持つ超一級品のプレイヤー。
娘はコルネット、デイヴィッドの嫁さんはフリューゲルと、コーリー・バンドのパーソネル表には「Childs」の文字が多い。
英国のトップ・バンドは我が番組に大いに貢献してくれているので、以前、彼にお礼の記念の品を差し上げたが、今でもリヴィング・ルームに飾って頂いているとのこと。
なかなか義理堅い人物だ。
こうやって一人一人思い出して書き留めておかないと、いつの間にか脳裏の裏の裏にしまいこんで忘れてしまいそうなので、結構必死に思い出している。
こんなにたくさんの音楽家と出会い、何十年もお付き合いしたり、あるいはたった5分間だけだったこともあるが、直接会って、握手をし、一緒に音楽について語ったり、経験談を話して頂いたり、共に食事をしたり、そんな細切れな断片的な交流が、積もり積もって今の自分の音楽観に繋がっていると思う。
だから、これは自分の音楽人生の重要な成分である。
さて、今日は「King of Brass」と称されるジェームズ・スコット氏。
1925年生まれ、今年の3月に86歳になある。
イギリスのブラスバンド隆盛の真っ只中を突っ走ってきた「ブラスの申し子」と言ってもいい。
ブラスバンドとの出会いは生まれた時からだそうだ。
ベセスオズバーン(歴史ある有名ブラスバンド)のバス吹きだった父親に連れられ、片道8マイル(約13キロ)の道のりを歩いて練習場に通ったと言う。
お父さんはバスを持って歩いたのだろうか・・・、ちょっと疑問。
8歳の頃にはコルネットを持ち大人のバンドに混じってソロまで吹いたと言うから驚きだ。
10代にして「天才少年」と呼ばれ、18歳で名門グライムソープ・コリアリー・バンド(映画「ブラス!」のモデルになったバンド)のプリンシパルの座に就いた。
1970年代、80年代には幾つもの名門バンドの指揮者として活躍、その指導力と人望の厚さには定評がある。
誰もが彼を「最高のジェントルマン」と認めている。
お会いした時も、素敵な老紳士だった。
私のたどたどしい英語をゆっくり聞いてくれて、また、解り易いシンプルな表現で応えてくれる。
終始笑顔だ。
近年は、ブラスバンドのコンテストの審査員などを務めている。
いつまでもお元気でいて欲しい。
今日は、ウィリアム・ハイムズ氏。
ウィリアム・ハイムズ、つまりビル・ハイムズだ。
吹奏楽関係の方にはちょっと馴染みがうすいか・・・。
でも(英国スタイルの)ブラスバンド関係者には御馴染みの作・編曲家であり指揮者でもある。
救世軍のブラスバンドは世界中に広がっているが、その中のトップクラスのバンドであるシカゴ・スタッフ・バンド、このバンドの指揮者として活躍している。
来年の6月だったかな・・・、ブラスバンドの聖地とも言うべき、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールのステージにも立つ。
編曲では「アメージング・グレース」などは世界中のブラスバンド(もちろん日本のブラスバンドも)が演奏しただろう。
作品は数多い。
彼はブラスバンドを知り尽くしている。
彼の織りなす金管楽器の綾は、難しい譜面ではないし、極めてシンプルと言ってもいいだろう。
でも、なのに、美しい響きがする。
気品があって、威厳があって、神々しい。
ブラスバンドの美しい響きを作ろうとするならば不可欠なのは彼の作品である。
見るからに大きな人だが、非常に神経細やかな気遣いと心の優しさを持っている音楽家である。
これが音楽に表れているのかな・・・。


