虫垂の解剖生理学の歴史
ガレンの時代の解剖は虫垂を持たないサルで行われていたため、その存在の記載は遅れた。
ダヴィンチは1492年に虫垂を明確にしたが、出版されたのは18世紀になってからであった。
ベレンガーリョ・ダ・カルピがcommentariaにて1521年に初めて虫垂を記載し、存在が知られるようになった。
ヴェサリウスは1543年のFabricaにて虫垂を明瞭に描画し、回腸と結腸と同じように盲腸に開口する3つの入口の1つと主張した。
ファロピウスが最初に虫垂を線虫に例えたようである。
消化機能に関与せず、機能が不明であったことと種によって虫垂を持つもの(ヒト科、ウサギ、ウォンバット)と持たないもの(サル、イヌ、ネコ)様々であったことから、ダーウィンをはじめ自然哲学者たちは痕跡器官とみなしていた。
虫垂の組織像
粘膜は大腸型であるが、結腸や直腸よりも薄い。
粘液分泌細胞を主とする分岐しない陰窩が並ぶが、欠落する部位もある。吸収細胞が管腔と陰窩の上部を覆う。上皮内分泌細胞は陰窩の基底部に存在するが、ほとんどはargentaffinで残りのほとんどはarygyrophilである。類似の細胞が粘膜固有層に単独で認められることもある。パネート細胞は正常な虫垂粘膜に認められるかは不明であるが、潰瘍性大腸炎のような慢性炎症では認められることもある。
粘膜には多数のリンパ濾胞が認められ、若年者で顕著で年齢とともに減少する。リンパ濾胞を覆う上皮はM細胞の形態をとる。
虫垂炎
虫垂腔閉塞の原因
若年者:感染によるリンパ濾胞過形成
高齢者:線維化、糞石、腫瘍(カルチノイド、腺癌、粘液腫)
地方特有:寄生虫
病態生理
閉塞による内圧の上昇→虫垂壁の小血管に血栓が生じ、閉塞する+リンパ流が停滞する。
虫垂が肥大するにつれ、T8-10に入る内臓求心性神経が刺激され、臍周囲の漠然とした疼痛として自覚される。
隣接する壁側腹膜に炎症が波及すると疼痛は局在化する。
診断のための評価
血液検査
・WBC
・CRP
・妊娠検査(妊娠可能年齢の女性)
Alvarado scale
・右下腹部への疼痛の移動:1点
・食欲不振:1点
・悪心、嘔吐:1点
・右下腹部痛:2点
・右下腹部の反跳痛:1点
・37.5℃以上の発熱:1点
・WBC > 10000:2点
CT
・直径が > 6 mmの腫大+腔の閉塞が見られる
・壁肥厚 > 2 mm
・fat stranding (dirty fat sign)
・虫垂壁の造影
・虫垂結石
非穿孔例に対する標準治療:虫垂切除術
ref.
Rondelli D, The early days in the history of appendectomy. J Med Humanities, 2013 (http://hekint.org/2017/01/22/the-early-days-in-the-history-of-appendectomy/)
Williams GR, A history of appendicitis. Annal Surg, 1983 (https://www.oumedicine.com/docs/ad-surgery-workfiles/williams_history-of-appendicitis-with-anecdotes-illustrating-its-importance.pdf)
Morson and Dawson's Gastrointestinal Pathology. 5th. pp.407-8
Martin RF and Kang SK, Acute appendicitis in adults: Diagnostic evaluation. UpToDate, 2018
Martin RF, Acute appendicitis in adults: Clinical manifestations and differential diagnosis. UpToDate, 2018
Smink D and Soybel DI, Management of acute appendicitis in adults. UpToDate, 2018