49歳男性が痙攣のために搬送された。てんかんの既往や現在の服薬はない。AIDSを患っており、現時点で治療を受けていない。身体診察において、頸部リンパ節腫脹が明らかである。頭部CTにて右側頭葉にリング状に造影される病変を認め、浮腫を伴うが、mass effectは伴っていない。腰椎穿刺を施行するも、白血球や赤血球は認めず、グラム染色陰性である。患者の血清Toxoplasma IgGは陽性である。ピリメタミン、スルファジアジン、レベチラセタムの治療を受けている。治療2週で中枢神経の病変の大きさは変化が見られないが、てんかんは起こしていない。脳脊髄液からのEpstein-BarrウイルスDNAを含む、すべての微生物学的な培養やウイルス検査は陰性である。この時点で患者に対して行うべきものとして次のうちどれが最適か。
A. 中枢神経系トキソプラズマ症に対する治療を継続する
B. デキサメタゾン
C. アシクロビル静注
D. 定位脳生検
E. 全脳照射
HIV感染症を有する患者において、中枢神経系トキソプラズマ症と原発性中枢神経系リンパ腫の鑑別はしばしば困難である。神経学的に安定な患者における標準的なアプローチはトキソプラズマ症として2-3週間治療し、再度画像評価をすることである。画像で明確な改善が認められた場合、抗生剤を続ける。2週間後に治療反応性が得られない場合は、治療を継続する必要はなく、定位脳生検が推奨される。この患者は免疫不全であり、中枢神経系トキソプラズマ症に対する治療に反応しないので、中枢神経においてEBV DNAが検出されたことは、中枢神経系リンパ腫の診断的価値がある。全脳照射は中枢神経系リンパ腫の治療の1つであるが、この患者は診断されているわけでなく、経験的に開始すべきものではない。中枢神経系におけるウイルス感染症やリンパ腫に対する治療は診断のなされていない現時点において推奨されない。神経学的な状態の変化やCTにおけるmass effectの存在がないために、デキサメタゾンは推奨されない。
答. D