生命医科学雑記帳

生命医科学雑記帳

evernoteのバックアップ、twitterに投下した内容のまとめとして使います。
細心の注意は払っているつもりですが、未だ専門分野を持たない研修医であるため、正確性に欠けることがあります。悪しからず。

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【症例】23歳女性
【現病歴】3日前からの発熱と血液色を帯びた痰、混迷、起立障害を主訴に来院。既往に1型糖尿病がある。身体診察上、起立性低血圧、頻脈、クスマウル呼吸があった。呼吸はアセトン臭を伴った。胸部単純X線で右下肺に浸潤影を認めた。

血液検査
Na 130 mEq/l
K 5.0 mEq/l
Cl 96 mEq/l
BUN 20 mg/dl
Cre 1.3 mg/dl
Glu 450 mg/dl
動脈血液ガス(室内気)
pH 7.39
pCO2 24 mmHg
PaO2 89 mmHg
HCO3 14 mmol/l
尿検査
ケトン体 4+
糖 4+

血ガス評価
ケトアシドーシスに伴うAG開大代謝性アシドーシス+市中肺炎に伴う呼吸性アルカローシス
酸塩基平衡異常がある場合、通常生理的代償だけではpHは正常範囲内とはならない
1型糖尿病患者で感染を契機にケトアシドーシスに陥ったと考えられた。
糸球体濾過量の増加に伴うケトン体の尿中排泄が増加するため、AGは点滴により低下することがある。

DKAに伴う異常所見
①低Na血症
高血糖による浸透圧性利尿によりNa排泄が増加。
口渇が強く、飲水を持続的に行い、希釈される。
②K欠乏
有機酸アシドーシスでは細胞内からのKの流出はあまり生じず、無機酸アシドーシスと異なり高K血症の合併は稀である。
〈メカニズム〉
有機酸アシドーシスの場合、MCTにより細胞外の有機酸アニオンとH+イオンは細胞内に流入し、細胞内のpHを低下させる。Na+-H+ 交換体とNa+-3HCO3共輸送体を通じた細胞内へのNa流入を促進する。Naの流入はNa+- K+-ATPaseの活性を保持し、細胞外のKの上昇は最小限となる。

一方、無機酸アシドーシスの場合、細胞外のpHの低下により、Na+-H+ 交換体とNa+-3HCO3共輸送体は抑制される。Na流入が抑制されるため、細胞内のNaは減少し、Na+-K+-ATPaseの活性は低下し、細胞内のKは正味低下する。

ただし、インスリン欠乏があるため、僅かにK値が上昇することはある。しかし、その場合でも進行性の浸透圧利尿によりKの排泄が増加し、体内のKの総量は減っている。DKAで低K血症が見られたら、体内のKは重度に減少している。

DKAの治療
①体液量の改善
0.9%NaClをsBP≧100 mmHgまたは合計2-3L投与するまで。血糖は補液で低下するが、230 mg/dlを切った際は、血糖の急激な低下による脳浮腫を防ぐため、5%ブドウ糖入りの輸液に変更する。
②ケトン体産生の抑制
0.1 単位/kgの速効型インスリンをボーラスで静注し、生食に0.1 単位/kgの速効型インスリンを溶解し、1時間かけて点滴投与する。
③K欠乏の是正
尿量が得られ、インスリンを開始した後、20 mE q/lのKClを補液に混入する。