STとは、PTやOTと並ぶリハビリの専門職で、一応国家資格です。
しゃべる・食べる に問題が生じた方の、人生のお手伝いをします。
対象は、乳児から高齢者まで幅広い。
哺乳・離乳食指導、言語発達の指導、構音障害や失語症・高次脳機能障害へのアプローチ、摂食嚥下障害へのアプローチ、口唇口蓋裂の言語訓練などなど、その仕事は多岐に渡ります。
病院や施設によってSTの仕事内容も多少変わるけど、私のいる病院は上記全てが 仕事になります。プラス研究。
研究…子ども産んでから全く関わってないので後ろめたい…
話変わって、タイトルの成功体験のこと。
仕事やってて、「これ成功した!」って思うことはあまりない。
患者さんが良くなることはもちろんあるけど、セラピストとして「自分よくやった!」って思うことはそう多くない。
良くなったのは患者さんががんばったからだと思うからね。
でも1回だけ(1回だけかい)、これは私の手柄じゃないかしら!?と思えることがあった。
今から2年前かな。
70代男性患者に対して。
奥さんとともにリハ室に来られて、食事の話を聞いてた時のこと。
奥さんとしては、ご本人の食べる速度が速くてたまにむせることが気になる様子。
でもご本人は、長年企業戦士としてバリバリ働いていて、お昼ご飯なんか15分やそこらでガガっとかっこんで、さー午後からもバリバリ働くぞ!ってのが美学だった。
チマチマゆっくり食べるなんて男らしくない!
という主張。
そんな方に、どう言えばゆっくり食べてもらえるのか?
あなたならどうする?(笑)
私が言ったのはこうです。
わかります!とてもよくわかります。
そうやって長年働いてこられたんですものね。
ガツガツ大きな口で食べる男性は、私も男らしいと思います。
でも、今はご引退されて、ゆったりした生活を送られていますよね。
年齢も重ねてこられて、喉の筋肉も衰えてきていますので、これまでと変わらないように食べていると、むせてしまうこともあるかもしれません。
そういった状況で、自分を見直して、パッとこれまでのやり方を変えられる、というのもまた、男らしいと思いますよ!
こう言うと、その患者さんはすごく感心してくれました。
君のボーイフレンドは羨ましいなぁ!とまで言ってもらえました(笑)
このときすでに既婚で子どももいましたが(笑)
私の言い方の、何がよかったか検証してみる。
私たちSTの仕事って、ゆっくり食べてください、一口ずつ飲み込んでください、とやたら言わなきゃいけない仕事。
それがその患者さんの命を守ることでもあるから、すごく大事なんだけど、そんな食べ方してる人なんてまずいないよね。
そこを変えてください、これまでの何気ない行動をこれから毎日3食全て変えてください、というんだから、患者さんにしてみればすごく大変なことなんだ。
これまでの人生の中で積み上げてきたことで、染み付いてるものなんだから。
それをまず頭ごなしに否定しないこと。
別に悪いことしてきたわけじゃないんだから。
そして、受け入れた上で、ゆっくり食べることの大事さを伝えること。
さらにこの患者さんに対しては、速く食べることに「男らしさの美学」を感じているようだったので、「男らしさの美学」は何も速く食べることだけではないのでは、と 新しい美学の捉え方を提案できたのがよかったのではないかと思う。
正論をただ突きつけるとではなく、その人の考え方に基づいた提案やアドバイスができたな、と思える、私にとっての成功体験でした。
こんなささやかなことでも、たぶんこの先も一生忘れないと思う。