ジブリの映画「借りぐらしのアリエッティ」の世界を実体験できる展覧会に行ってきました(東京都現代美術館で開催中)。
アニメの中の小人の家を、映画美術で世界的に評価の高い種田陽平さんがリアルなセットとして再現した、いわば虚構と現実の融合。実際に触ったり覗いたりできて、まるで小人になったみたいで楽しかったです。
小人たちが人間の家から“借り”てきたものたちを、自分たちサイズで上手に利用しているアイディアを随所に発見できました。たとえば・・・灰皿に水を張ってお風呂として使ったり、腕時計のベルトを外して掛け時計にしたり、切手を額装して飾ったり・・・。高島屋の包み紙(おなじみのバラ柄)が壁紙になっていたり。ダイニングにある大きな釜戸は植木鉢を利用して作られていました。
映画で見たままに再現されたお家の中。アリエッティの部屋がすごく可愛くて、ベッドの周りにどんぐりが飾られているんですけど、アリエッティから見るとどんぐりはこんなに大きいんだ~と、小人のサイズを実感しやすかった。お父さんのお部屋には“借り”てきたボンドや釘やいろんな道具がきれいに収納されていたり。ダイニングにはお母さんが大好きな角砂糖がテーブルの真ん中に置いてありました。たぶん、ドールハウスから借りきたと思われる小人サイズの食器類と一緒に、人間サイズのスプーンがあったり。中でもおもしろかったのは、人間の世界に“借り”に行くための出口。吹き抜けになった細いスペースに糸車を滑車のように使って上に上がる仕組みとか、壁に打ち込まれた釘の階段がリアルに再現されていて、映画のワンシーンが蘇ってきました。
いろんなお部屋や廊下を順々に見ていくと、最後の壁にしつらえられた覗き穴から見た人間の靴の大きいこと!あれが人間~と、まるで自分が小人になったような錯覚を覚えるほどでした。たった数十分間の体験なのに、ちゃんと感情移入できるように起承転結で作られているんですね。さすが、高名な映画美術監督、エンターテイメント性まで計算してるんでしょうね。
一旦、展示室から出て順路を進むと、また最初と同じ軒下の枠を隔てて、日差しがたっぷり差し込むお庭が!まるで木のように特大サイズのタンポポやドクダミ、ヒメジオンなど、懐かしい野草たちが朝露に濡れて咲き乱れ、アリやバッタもあちこちに。本当に凝っていて、ホンモノそっくりで。タイムスリップしたみたいな感覚でした。
まるで、テーマパークのアトラクションさながら。オープンしてだいぶ経っているのに、連休初日だったからか、やたら混んでましたけど、前売りを持っていたので入場待ちだけで済みました。公式サイトには、WEBでチケットを発券できるサービスもあるみたいなので、これを使った方が早めに入場できるのでは?
会場内には、アリエッティの世界の他に、このセットを手がけられた種田陽平さんの作品の数々を写真や設計図やミニチュアなどで振り返る展示室も。製作の過程でのちょっとしたエピソードなども添えられていて、興味深くみせていただきました。クエンティーン・タランティーノの『キル・ビル』、三谷幸喜『THE有頂天ホテル』『マジックアワー』、李相日の『フラガール』、ちょっと古いですが『スワロウテイル』(この作品で海外からの評価が上がったみたいです)、そして今話題の『悪人』といったすごい作品の美術を担当していらっしゃる、すごい才能の持ち主なんですね。映画のためだけにこだわって作られ、その映画の印象を大きく左右するほどの存在でありながら、撮影が終わると壊されてしまう・・・(欧米では撮影中のセットをHOT SETというそうです)そう考えるとちょっと切ない運命の美術作品なんですね。
最後の展示室は、ふたたびジブリの世界。アリエッティのキャラクターが決まるまでの変遷・・・初めのうちはショートカットで少年っぽいイメージだったのが、どんどん変わっていって、最終的に今の姿に決まったようです。また、宮崎駿さんご自身の手によるイメージボードも展示されていました。なるほどね~と思うような指示が書き込まれていて、ちょっと感心。アリエッティの大きさだったら、人間の世界はどんな風に見えるのかを研究するために、等身大のアリエッティを作って、実際のものとの比較をしながら描いていったそうです。アリエッティとお家の実物大の模型(もはやドールハウス並みの細かさ)も飾られていました。(となりのオフィシャルショップで、これの簡易版が30万円でした。完全受注発注の予約制みたいです)
ジブリの作品って、細かいことまでこだわって、ちゃんと考えて作られてるところが立派だな~と思います。子供にはそこまでわからなからって、勝手に線を引いちゃうことって、普段の生活の中にも少なくないですけど、まあ、ジブリが子供だけを対象にしているわけじゃないから、変なこと言ってるだけかもしれませんが・・・。とにかく、真摯な制作スタンスがとても好きです。人気タレントさんを声優に起用して、お客を呼んでるとか言われたりしてますけど、もしも作品がタレント頼みのつまらない代物だったら、こんなにたくさんの動員は図れないわけですし。ジブリ作品を観ると、自分が忘れてしまっていた大切な何かを見つけられるとか、忘れてしまっていたことに気づかされたりして、観て良かったって思えることが多いんですよね・・・。
朝海ひかるさんが『おもひでぽろぽろ』に出演されるので、もう1度観なおしてみようと思ってます。




