近々王様の御子が生まれるらしい
街はその話で持ちきりだ
といっても私は交流の深い友達はいないため商人達の噂を耳にしただけなのだが
その噂によると披露パーティーには国中の神通力を持つものを招待するらしい
やはり、私も招待されるのだろうか
そうなると祝いの言葉を考えなければ
さて、どんなものにしようか
御子の幸せを願うもの?
それとも整った顔か…富、名誉
何がいいのだろう
……あぁ
心の美しい人になれるようにと、言葉を紡ごう
こんな醜い私には似合わないが、御子の未来にはきっと必要になる
人間は美しい物に惹かれるから

無事、御子が産まれたらしい
商人達は色めき立ちパーティーに必要なものを準備していた
国中が御子の誕生を祝っていた

国中に散らばる神通力を持つ物全てを招いておきながら
なぜ、私は招かれないのだろう
私は国の者として認められてないのだろうか
なぜ、なぜ、なぜ
そんな言葉が脳内をぐるぐると渦巻き、気づいた時には城へと向かっていた


「姫の15歳の誕生日に錘に刺されて死ぬだろう
あははははっ!」
もう終わってしまえばいいと思った
私のやってきたことなど全て不毛なのだ
神通力をもつ彼女達も、所詮上辺だけの関係だったのだ
これで私は終わる
神はいつだって罪を見逃しはしないのだから


もうその刻が来てしまったか
ほぉら王子様
私を殺してごらん
返り討ちにしてやるから

つまらない人生だった
顔色を伺い生きるなんて、笑えてしまう
神通力なんてもの、私はいらなかった
父や母に疎まれるこの力なんて、なければよかったんだ
もういいんだ、全てが終わる
楽になれるんだ
私は私から解放される
寂しいけれど一人で逝こう
あぁ、王子様
その塔の先にはお姫様がいるから早く起こしてやってくれ
哀れな私など見向きもしないお前なんて嫌いだから
早く私の墓場から消えてくれ
さよなら、私の大嫌いな世界
涙は拭わないで逝くよ
最後の良心だから