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読んだ本の紹介とか、感想とか。

妖怪アパートの幽雅な日常①

香月日輪
講談社文庫

やむにやまれぬ事情で引っ越した先。
家賃2万5千円のそこは、事情あり物件だった…なんてことは、まぁある事かも知れない。
が、そこが妖怪が出る、妖怪の棲むアパートだった、となるとこれはまためったにない事だ。

主人公の夕志が引っ越した先がまさにそんなアパートで、人間も住んではいるが、大家さんは妖怪。
他の住人はというと、術者の高校生にコアな人気をもつ小説家に豪快な画家、
超絶おいしいご飯を作ってくれるが手首だけの賄いさんにかわいい少年と犬の幽霊、
人か妖怪かすらあやしい骨董屋に古本屋。
非常ににぎやかである。

悪さをする妖怪ではないから危険は無いものの、
常識の通用しない妖怪アパートで、主人公は文字通り常識破りの事に色々と出会い、
人生観を変えていく。
その過程は心温まるものであり、どこか懐かしい。
そう、きっと一昔前は、人間だけのアパートでもこんな感じだったんだろうな、と思う、
心温まるアパートだったのだ。

色々不便はあるだろう。
でも私もそんなアパートに住んでみたいと思う。
人(?)の干渉が煩わしくなるかもしれないが、きっと大切な事を学べる空間だと思う。
遺品整理屋はみた!! 天国へのお引っ越しのお手伝い

吉田太一
幻冬舎文庫

遺品と聞いて、ミステリーを思い浮かべる人が多いのではないだろうか。
であれば、ちょっと期待外れかもしれない。
この本の中で扱われる遺品は、ごくごく普通の遺品だ。
そこから犯人が割り出される事もなければ、事件に発展する事もない。
だが、遺品には色々な思いが残されてもいる。
そしてそれをめぐった小さなドラマがあちらこちらにある。

大切にされていたのだろう遺品もあれば、引き取り手のいない遺品もある。
残された人の思いもあれば、ただのゴミ(本当にゴミなのだ)が残っている場合もある。
誰かがなくなれば、大なり小なり遺品が生まれる。
それはどう処分されるのか。

この本の中で扱われている多くは、孤独死した人の遺品だが、
自分の立場に置き換えてみたときに、色々考えさせられた。
自分が今使っているパソコンも、ある意味自分が死ねば遺品になる。
残された人がそれをどうするのか。
そもそも私は温かく見守られて死に、思い出とともに遺品が処分されるのか。
孤独に死んで、業者の手によって綺麗に遺品が処分されるのか。

エンディングノート等、昨今売れていると聞いた事もあるが、
遠いいつか、ではなく、いつか自分にもやってくる時、とうけとめて、
今から考えておかなくてはいけないのかも知れない。

遺品と一緒にあるのは、たいていがご遺体だ。
なので、たまに、あまりリアルに想像したくないような描写もあるが、
それも一つの現実なのだと思う。
はじめまして、本棚荘

紺野キリフキ
MF文庫

「お家賃を本で払う」
昔はそんなこともあったのか、なかったのか。
ただ、そのアパートは部屋はもちろん廊下にも本棚があった。
そしてそこに住む住人は誰もがみな一癖も二癖もある人たちばかりで。

主人公は、姉に留守番を頼まれて山から本棚荘にやってくる。
そんな主人公も姉も『とげぬき』を仕事にしている一風変わった人で、
とげを抜きながら都会の人たちと交流が始まる。
『とげ』とは一体何なのか。
『とげ』を抜くとその人はどうなるのか。
なぜ『とげ』はやってくるのか。

本棚荘、というわりには本の話はあまり出てこない。
とおもいきや、突然本がでてきたりもする。
そもそも本棚荘の中にはそこらへん中に本棚があるのに、
本棚を本棚として付き合わない住人。
タイトルが与えるイメージとはちょっと違った内容だけれども、近くに必ず本がある。
そんな不思議な話ばかりが収録されています。

『本』とは
『とげ』とは
悩んでみるのも面白いかもしれませんね。
思い出のとき修理します2

谷瑞恵
集英社文庫

お付き合いをはじめた理容師の明里と時計屋の秀司。
寂れた商店街に住む彼らの元を訪れるのは修復したい過去を持った人たちばかり。
もちろん、タイムマシンがあるわけではない為、やり直す事は出来ないが、
一人ひとりの思いを紐解いていく事で修復される思い出がある。

時計やのショーウィンドウには一枚のプレートが飾られている。
「思い出の時 修理します」
そのうたい文句にひかれて今日も店を訪れる人がいる。

人の死なない、安心して読める、どこか心温まるミステリー。
謎の少年太一が良い感じにアクセントとなり、ちょっと不思議な現実を垣間見る事が出来ます。
心につかえた事がある人には、やり直す為の勇気をほんの少しくれるかもしれませんね。

そしてこのシリーズを読むと、人はみんな本当に不器用なんだなぁ、と思います。
不器用で、照れ屋で、伝えたいけれど伝えられない、伝えられなかった思いがある。
すれ違ってしまった思いがある。
そんな思いを胸に生きる人にとって、秀治の時計屋さんは本当に思い出の時を修理しれくれる
切っ掛けになれる場所なのかもしれませんね。

毎回、古い時計に関する知識も随所で紹介されており、時計に興味がある人もない人も、
興味深く読める話でもあると思います。
2045年問題

松田卓也
廣済堂新書

コンピュータが進化するとどうなるのか。
ターミネータやマトリックスの世界は来るのか…
それも来ないのか。

コンピュータは日々進化している。
数年前、数十年前から比べるとその進歩の速さは目を見張るものがある。
そして、2045年にその進化の特異点がやってくる可能性がある。

実際にターミネータやマトリックスの正解が来るのかどうかは、誰も答えはわからない。
だが、確実にくるであろう進化の果ての未来に何が起きるのかを、
分かりやすくまとめてくれている。
実際に書かれている事が起きるのかどうか、それは誰にもわからないが、
いずれ来る未来の姿をほんの少し想像してみる糧として、非常に面白い読み物だと思う。