マネージャーになったばかり、部下を持ったばかりの社員を対象に研修をしていると、部下に対して悩んでいることとしてよく聞くのは、
・ なぜ出来ないのか分からない
・ 何が分からないのか分からない
・ 何を考えているのか分からない
・ 指導と叱るの境界線
・ 自分の仕事が忙しいので時間がない
・ 仕事を任せられない
などなどが出てきます。
この中で「時間がない」はマネージャーとしてもっとも致命的。他の問題よりも優先順位を高くして取り組むべきだと考えています。
部下のことが「分からない」と「時間がない」は割と比例していて、コミュニケーションの時間を十分に取れていないケースが多いようです。
これまでプレーヤーとして積み重ねてきた成功体験を当てはめて物事を判断する傾向があるので、自分とは異なる考え、スキル、能力、価値観を持った部下のことが分からない。
「普通はこうする」
「こんなの出来て当たり前」
「そんなことするなんてあり得ない」
まずは、「普通」「当たり前」「あり得ない」はこれまでの経験と知識から出来上がった単なる「自分の常識」であって、必ずしも「相手の常識」ではないことに気づき、初めて部下に視点を向けることがマネージャーとしての第一歩。
「普通」「当たり前」「あり得ない」
この3つの言葉を使いそうになったら、ぐっとこらえ、今、言おうとしていることが「自分の常識」だけに当てはめていないかを考えるようにしています。
では、その「相手の常識」と「自分の常識」の合わない部分の中で、その部下にとって
・ スキルが足りないのか、
・ 能力が足りないのか、
・ 考え方や価値観が違うのか、
この振り分けが出来ているかを自問することが次のステップ。
この振り分けをするには、常に部下としっかりコミュニケーションしていないと分からないはずですが、コミュニケーションを取っていないマネージャーは話してみるとすぐに分かります。
「スキルが足らないんだと思います」
「能力が足らないんだと思います」
「価値観が違うんだと思います」
「思います」ということは、自分がそう思うだけではありませんか?
部下と時間をかけて話して、自分の中で確信出来ていたら「思います」は出ませんよね?
と問うと、そうだったと気づくものの、「部下と話す時間がない」という答えが返ってくることが多い。
でも、
部下と話す時間がない →部下のことが分からない → なぜ指示したことが出来ないのか分からない → 部下に仕事を任せられない → 自分でやってしまう → 部下と話す時間がもっとなくなる…
というネガティブスパイラルに入っていることを知ると、「部下と話す時間を取る」ということがマネージャーの重要な仕事だと認識できます。
部下と話す時間を持つ → 部下のことが分かってくる → スキル、能力、価値観の違いによって適切な指導をする → 部下は仕事が出来るようになる → 自分がやっている仕事も任せてみる → 部下の仕事の幅が広がる → もっと任せてみる →空いた時間で新しいことにチャレンジする
というポジティブスパイラルに変わります。
…… と言うと簡単ですが、マネジメントを長く経験している人なら、これで解決出来るなら状況は悪くない、「それでも本当に時間がないんです」という状況に陥っているケースが少なくありません。
特に中間管理職は、さらに部下とコミュニケーションを取ることに慣れてない世代の上司からどんどん仕事が降ってきて、やっと出来たと思ったら次の目標値はアップしている。
しかも、スキルが足りない部下なら反復練習させとけばいいですが、能力が足りない部下を持ってしまうと、その人の能力に合ったきめ細かい指導と確認に時間が取られる。
これまでの知識と経験で何とかなる仕事であれば残業して時間をかければ乗り切れますが、マーケットや顧客のニーズが多様化している状況では、マネージャー自身も新しいことを勉強しないと太刀打ち出来ない。こんな状況で自分の勉強に時間を割くなんて…無理でしょう!?
これがミドルマネージャーの置かれている状況かも。
ここしばらく、私もこの状況に陥ってましたが、とりあえず「ここまでは何も考えずにやり込んで成果を出す」という状況から、「何とか時間を捻出する」という状況になり、部下の状況把握の段階に進めそうです。
本来、ここで威力を発揮するのは、普通でも当たり前でもなく、時にあり得ないことをするけど、スキルと能力は高く、異なる考え方と価値観を持つ部下です。
この部下は、マネージャーとは違った知識や経験から自らの考えと価値観を作り上げているので、マネージャーが太刀打ちできない新たな挑戦に異なる視点を加えます。
成功するかしないかはケースバイケースですが、1人のマネージャーがこれまでの考えや価値観でないものを得る時間を考えると効率的。
これが企業が多様な人材を持つ本来の価値で、ダイバーシティ推進を経営戦略に取り入れる目的になります。
ここで間違ってはいけないのは、スキルも能力も低く、考え方と価値観が違う人材は対象にしていないということです。
スキルと能力の幅が必要なのであって、高い低いは意味としてはダイバーシティではありますが、企業のダイバーシティ戦略には入っていません。
ダイバーシティ研修をしていると、ここを大きく誤解していることが多く、
それは女性だからではなく、スキルが足りないからでは?
それは外国人だからではなく、能力が足りないのでは?
組織が必要としているスキルや能力が足りなければ、そのままにするのではなく、しっかりと理解してもらい、指導をしないとね。
以上、ダイバーシティ研修の流れでした。
やっていると、リーダーシップ研修にとっても似ている。
多様な人材をきちんと活用出来る人は、リーダーとしても優秀であるということですね。