少し前に彼は成人をむかえ、仕事の休みにしばらくぶりに顔を見せてくれた。

 

 

 

かつてはそんなこと一度もなかったが、

そのときは改まって「相談があるんだよ」と目の前にきて話を始めた。

 

 

 

相変わらず、人との距離感や、タイミングなどに配慮はあまり感じられないが(笑)、

真剣さはしっかり伝わってきた

 

案の定、会社での人間関係に悩んでいる、とのこと。

 

私なりなアドバイスを伝えると、おおげさに「ありがとう!」と言いながら、

相談は事のついでだったかのように好きな楽器を演奏し始めた

 

 

 

演奏をひと通り終えて互いに少しのんびりしていると、

昔話に花が咲いた

 

私から、

 

「うまくいかないことがあると、昔はよく手が出ていたね

 

「今は本当に優しい目をしているけど、当時はとっても恐い目のときもあったっけ」

 

「いま思うと、なんであれほど手が出たんだろう」

 

 

本人は、

 

「昔の話だね~。でも今でもキレちゃうときたまにある

 

「一応、我慢しているよ

 

苦笑いしながら、照れながら、

自分のことを穏やかに話す彼が、ことのときはなんだかとっても大きく感じれた

 

 

 

そして、

 

「いま思うと、なんであれほど手が出たんだろう」に対して、

いまの本人なりに伝えてくれたことばがとても印象的だった

 

 

 

「あのころ、自分なりに伝えたいことはあったと思う」

 

「でも、なんて言っていいかわからなかったんだよね」

 

伝える方法は、手足をつかうことだけだったんだと思う」

 

「いま思えばね」

 

 

 

“よく手が出る子”

 

 

簡単な認識で彼をくくっていた。

 

でも、あたりまえだけど、

彼には彼なりの事情がしっかりあった

 

母親に対して行った殴る蹴る

 

もちろん、やってはいけないこと

 

だけど、「オレのこと、聞いてくれ!わかってくれ!」という叫びがそこにはあった。

 

 

 

こんな素敵な子の想いを、私は受け止めようと努力できていただろうか

 

目の前の衝撃に、行為を止めることだけにしか頭が回っていなかった。

 

声にも、叫びにもならない“想い”を大切にしたい

 

彼が教えてくれた、

一生大事にしたい大切なこと

 

 

 

 

次回も素敵な子のエピソードを

書ける範囲で書いてみようと思います。

ぜひぜひご覧ください。

 

 

 

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持ち前の音感や、リズム感から、ドラムやたて笛、ギターの演奏は誰よりも上手だった。

 

 

 

相変わらずキレる場面も多かったが、好きなことが増えて、笑顔も増えた。

元々持っている周囲への優しさもどんどん増えていった

 

 

 

素敵さがどんどん増えた。

 

 

 

あるときから、バレーボールが好きになった。

 

最初は1対1でのやり取りだけだったが、楽しさを覚えるたびに、

チームでバレーボールすることを夢見るようになった。

 

 

 

 

高校には行ってみたいと思う

真剣なまなざしで伝えに来てくれた。

 

学校にいい思い出を持った経験があまりないのを知っていたので、

思わず「なんで?」と聞いた。

 

バレーボール、やりたいんだよね

 

「そうか、バレーボール好きだもんね」

 

理由はわかりやすいと感じたが、

正直、この子が“チームプレー”をすること、“ひととうまくやる”ことに全くイメージを持てなかった。

 

 

 

近所の定時制高校に入学し、バレーボール部に入部した

 

「周囲と合わずに、すぐ辞めてしまうかも」

入学・入部当初から、いつも不安な気持ちを、私は勝手に抱いていた。

 

 

 

あるとき、本人から、「今度試合があるんだよ!見に来てほしい!」と言われた。

「(試合?出場できるの?)」と思いながら、試合を見に行くことにした。

 

 

 

試合会場。

定時制のバレーボール部は、そもそも部員がチーム人数ギリギリだった。

チーム内での競争はなく、むしろ、いるメンバーで戦うしかないので、先輩も後輩も切磋琢磨して上手になろうとしていた。

笑顔が多く、明るくて、素敵なチームだった。

 

 

試合開始前。

背番号を審判に見せるために全員が同じ方向を向く場面があるのだが、

相変わらずとっさには状況が理解できず、本人だけそっぽ向いていた。

見かねた先輩がすぐに注意。

でも、注意した先輩は、にこにこしていた

 

おそらく、初めてのことではないのだろう。

そして、彼(本人)の性質をよく理解してくれているのだろう、とすぐにわかった。

本人も、にこにこしながら、自分がいるべき場所に、そして方向に向き直った。

 

 

試合開始。

バレーボールをにこにこしながらプレーしている彼の姿があった。

 

 

私の目からボロボロ涙があふれてきた

 

 

彼の性質を本当によく理解してくれている先輩たちや監督(先生)、周囲の目、

何より本当に楽しそうにプレーする彼の姿が本当に素敵だった

 

 

涙が止まらなかった

 

 

身体能力は非常に高く、周囲からもかわいがられていた。

当初、全く想像できなかったけど、みんなから認められ、

楽しく“チームプレー”している姿が印象的だった。

 

以降、部活を頑張り続け、

定時制・通信制の部で全国大会に進み、なんと全国2位を獲得した年もある

 

その後、無事に高校を卒業し、

好きなゲーム関連の専門学校に進み、IT関係会社に就職した。

 

 

 

 

 

 

 

当時を振り返り、彼が語ったことばに私は気づかれた。

ぜひ次回もご覧ください。

 

 

 

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「ウッ…、ウッ…、ウッ…」

 

 

 

年齢より体は小さく感じる小学6年生の男の子

 

 

 

誰もが目にできる場で、自分の母親の体を叩き、殴り、蹴り続けている。

 

母親は「ウッ…」という、聞こえるか聞こえないか程度の小さな声をあげながら、目を閉じて耐えていた。

「どしたの、どしたの⁉」といいながら、思わず止めに入ったことを今もはっきりと覚えている。

異様な光景だった。

 

母親は、「大丈夫です。自分が我慢すればいいのだから」と、ぐっと目を閉じてこらえていた。

 

 

 

衝撃的な出会いだった。

 

10年以上前、初めて会った小学6年生の男の子は、目つき鋭く、いつもナイフのような存在だった。

 

発達障害があり、こだわりが強く周りの感じていることを理解できないことが多かった。

音にも敏感で、ズレた音階や、ズレたリズムを聞くたびに頭を抱えていた。

 

 

 

周囲との隔たりから、集団生活になじめず、不登校だった

キレやすく、手が出やすい子だった。

キレると人や物にあたるので、「怖くて同じ場にはいられない」と泣いていた子どもたちもいた。

 

 

 

周囲とのうまくいかなさから、本人は何度も涙を流していた

 

互いの言い分がすれ違い、到底話し合いにならないような話し合いを、他の子どもたちと幾度となく行った。

「どうしたら、互いを尊重しながら、ともに過ごせるのか

 

 

 

同じことの繰り返しのような日々を過ごしながら、

人の体や心の痛みを知りながら、少しずつ人にあたる場面が減っていった。

あるときは、本人なりに納得できず、唸り声をあげながら、地面に生えている自分と同じくらいの雑草を力任せに何度も引き抜いていた。

思えばこのころから、怒りを人に向ける場面は、ほとんど見なくなった

 

 

 

 

 

そんな彼が「好き」を手に入れた。

みるみるうちに成長してく姿に涙が止まらなかった。

ぜひ次回をご覧ください。

 

 

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