僕とハッピーの赤ちゃんが生まれて一週間が経った。赤ちゃんの名前は、男の子が、ロッキーくん。女の子は、ラブちゃんと付けられた。ロッキーは、男らしく、強い子になってほしいというママの願いが込められてる。ラブちゃんは、皆から、愛されるように、だって。
今日は、パパとママは、お客さんと一緒に、夕食を外で済ませて、帰ってきた。ママは、いつものように、ハッピーの部屋へ一直線。あれ、ママの様子が変だぞ。大きな声で、パパを呼んでる。パパもびっくりしたように、ママのそばへ来た。ママが泣いてるいっぱい泣いてる。ハッピーも泣き出した。
何があったんだろう。僕にはまったく分からない。ハッピーの出産前から出産後の今日も、ハッピーーの気持ちが落ち着かないから、僕の部屋と別の部屋にハッピーの部屋があるから、僕には何があったのか、まったく分からない。
ママが、泣きながら小さな箱を持ってきた。
白い布で何かを包んで箱の中に入れた。ママは、ずっと泣いてる。
ハッピーも、ずっと泣いてる。小さな箱は、別の部屋に持っていったみたいだ。パパがハッピーを抱き上げた。
パパも悲しそうな顔をしている。パパのあんな顔初めて見た。何がそんなに悲しいんだろう。ハッピーは、パパが大好きで、抱っこしてもらうと、すごく喜んで尻尾をいっぱい振るのに、何故か今日は、下ばかりをキョロキョロ見て、何かを探しているようだ。やっと僕もお家から出してもらえた。ハッピーが、パパに抱かれてるうちに、赤ちゃんを見てこようっと。
あれ、赤ちゃんが一匹しかいない。確か、男の子と女の子の二匹いたのに・・・。
もしかして、あの小さな箱は、男の赤ちゃんが入っているのかなぁ・・。
ハッピーの泣き叫ぶ声が、家中に響いてる。パパに降ろしてもらったハッピーは家中を走り回ってる。
くぅ~んくぅ~ん。悲しそうな声を出しながら、一生懸命何かを 探しているようだ。
そうか、赤ちゃんを探してるんだ。
その夜遅くに、僕たちは寝た。ママの泣き声が、いつまでも聞こえていた。
翌朝、早くにパパとママは、あの小さな箱を持って、出かけていった。
二時間ぐらい経って、帰ってきた。ママの手に、あの小さな箱はなかった。
ママの目は、真っ赤になって、はれていた。僕とハッピーの朝食の時間だ。
ハッピーは、お家から出してもらったのに、ご飯も食べずに、再び、くぅ~んくぅ~んと泣きながら、赤ちゃんを探している。その様子を見たママが、又泣き出した。
それから、一週間近く、静かな時間が流れた。
パパは、ママを元気付けようと、一生懸命だった。僕も、一生懸命、ママとハッピーを励ました。ハッピー残念だけど、女の子の赤ちゃんを、死んじゃった男の赤ちゃんの分まで、大切に育てようねって、僕はハッピーに言った。ようやく、ママもハッピーも、ヨチヨチ歩く女の赤ちゃんにラブちゃんという名前を付けて、少しずつ元気になった。又明るい我が家に戻った。
良かった良かった。僕もパパも安心したよ。
ハッピーの出産から一ヵ月後の日曜日。今日は、パパの会社の行事の日。
朝から、パパとママは、出かけていった。
夕方になって、元気にママたちが帰ってきた。ところが、ラブちゃんの様子がおかしい。
元気がない。カゼをひいたのか。
ママは、心配そうに、すぐに病院へ連れて行った。
「ハッピーが、子供にお乳をあげていないのではないか。体力が弱っている。今晩がやまですね」ってお医者さんに言われたとママが、心配そうな顔で、パパに言ってる。
あんなに小さな体なのに、注射も打たれたんだって。かわいそうに。
その夜、ラブは、まだ十月だというのに、ホカロンを毛布にくるんでもらって、一人で、小さな箱でに入れられて寝かされた。パパは、大丈夫だよって、ママを励ましていた。
夜中にママが急に叫んで、パパを起こした。パパは、すぐに手のひらにラブをのせて心臓マッサージを始めた。一分二分三分駄目だ・・・。
ラブちゃんは、そのままパパの手の中で、泣くことも無く天国へ行ってしまった。
先に逝った赤ちゃんのところに、ラブちゃんも逝ってしまったんだ。
うわぁ~ん うわぁ~ん・・・・。
翌日の朝、パパとママはラブちゃんを、赤ちゃんの眠っているお墓に連れて行った。
ハッピーは、気が狂ったように泣きながら、ラブちゃんの匂いのする場所をたどり、家中を歩き回って探してる。
ママも、ずっと泣いている。パパと僕は、ママを元気付けようと一生懸命頑張ったけど、赤ちゃんを二匹共死なせてしまったから、簡単にはたちなおらせられなかった。
ハッピーは、一週間ぐらいで、ラブちゃんを探すことをやめて、いつもの元気なハッピーに戻ってくれて、僕も一安心だ。
それから二ヶ月くらい経ったある日、ママは、長い髪をバッサリ切って、悲しみから立ち直ったように、明るい表情で帰ってきた。
僕とパパは、ホッとした。その後は僕とハッピーとパパとママとで仲良く楽しい日々を過ごした

慰めても立ち直れない

悲しくて悲しくて